テクノロジー

2020.05.29 05:30

新型コロナで株価3倍、ワクチン開発企業に賭けたハーバード大教授の投資術


スプリンガーにとってモデルナは最も注目度の高い投資先だが、それ以外にも3つの小規模な上場バイオテック新興企業「セレクタ・バイオサイエンシズ」「スカラー・ロック」「モーフィック・セラピューティック」の主要な投資家でもある。スカラー・ロックとモルフィックでは共同設立者でもあり、ハーバード大学での科学研究を基にした企業の設立を支援している。

億万長者になったスプリンガーだが、今でもマサチューセッツ州ケンブリッジで毎日自転車に乗って通勤し、研究室で研究をしている。唯一の贅沢は自宅だと言う。「ガーデニングや石を集めるのが好きで……お金は必要ありません。学問的なライフスタイルを送っています」

その財産を科学界に還元もしている。2017年には、タンパク質科学の研究とバイオテック起業家のアイデアの実現を支援する独立系非営利団体「Institute for Protein Innovation」の設立に1000万ドルを寄付した。

「積極的な投資だけでなく、積極的な慈善活動も好みです。世界中の科学者が生物学的発見に利用できる、信頼性の高い新しい抗体の開発を支援するだけでなく、新しい技術を使ってより多くの発見が可能にするのが目的です」

新型コロナウイルスとの闘いによって、資産が10億ドル(約1070億円)以上となった億万長者はスプリンガーだけではない。3月11日のパンデミックの宣言以来、ヘルスケア分野の億万長者のうち数人が資産を数十億ドル増やした。パンデミックに終止符を打つ「新展開」への期待が高まるなか、バイオテック株の上昇は今後もペースを上げていく可能性がある。

スプリンガーは、パンデミックが去った後もバイオテックが急成長を続けるだろうと楽観視している。「以前は、(バイオテックの)薬は値段が高すぎると非難されていました。しかし今では、バイオテックが『大いなる救い手』であることを誰もが認識しています。新薬の大きな可能性を秘めています」


5月25日に発売したForbes JAPAN7月号は、「パンデミックVSビリオネア 変革を先導せよ」特集。スプリンガー以外で、総資産が10億ドル以上になったビリオネアたちは誰か? Forbes恒例の「世界長者番付」と「日本長者番付」の2020年版を発表、ソフトバンクグループCEOの孫正義ズームの創業者エリック・ユアンのインタビューも公開中。

翻訳=Forbes JAPAN 編集部

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