クルマを急速加熱し「コロナを焼き殺す」技術、フォードが開発

Ford Motor Company

新型コロナウイルスのパンデミックを収束させる上で、課題となるのが日常生活の維持に必要不可欠な「エッセンシャルワーカー」たちの安全確保だ。米国の大都市で最も感染率が高いグループとなったのが、警官などの緊急対応を行う人々だ。

デトロイトでは数百名の警官が感染し、彼らと接触を持った1000人以上の警官が隔離され業務を遂行できなくなった。この状況に対処するため、米国の警察車両の大半を製造するフォードの技術者らは3月から新たなシステムの開発を進めてきた。

そして5月27日、フォードは車内の温度を急速に上げてウイルスを無力化する車載用ソフトウェアを開発したとアナウンスした。

同社はオハイオ州立大学の研究チームと実験を行い、車内温度を56度まで引き上げた場合、15分間でコロナウイルスを99%死滅させられることを突き止めた。この方法であれば、手作業で消毒しにくい隙間に潜むウイルスも無効化できる。

エンジニアたちは車両のコンピュータ内のソフトウェアに修正を加えることで、加熱モードを実現した。新たに開発したソフトはまず、フォードのエクスプローラーをベースとした警察車両に導入され、ボタンを押すと加熱モードが起動する仕様になる。

加熱モードではエンジンが通常のアイドリング状態を上回る速度で回転し、車内の温度を急速に高め、約93度程度まで上昇させるという。その後15分が経過するとアラームが作動し、ウイルスの無効化が終了したことを警官に知らせる仕組みだ。

この機能は、警官らがシフトを終えて、次のチームに車両を引き渡す場面での使用を想定している。警官らは一般的に、1回のシフトを通じて同じ車両を用いるため、勤務中に消毒を行う必要は無い。フォードは既にニューヨーク市警など、複数の州の警察署でこの機能の有効性を確認済みという。

全米の警察車両の63%をフォードの車両が占めており、その大半がエクスプローラーをベースとしたものとなっている。フォードはまず、試験的にエクスプローラーに加熱モードの搭載を進め、その結果によって他のモデルへの導入を検討するとしている。

タクシーへの導入は難しい


交通分野では車両の消毒が今後の重要課題とされており、公共交通機関やタクシー、配車サービスで用いられる車両、さらには今後のロボットタクシーにおけるウイルス対策についても検討が進んでいる。

フォードが警察車両向けに開発したシステムは、非常に実用的ではあるが、その他の領域では活用が難しい。自動運転車はEV(電気自動車)をベースとしたものであり、タクシーや配車サービスの車両が、客を乗せる度に15分もかけて消毒を行うのは現実的ではない。

これらの車両については、先進的な空気のフィルタリングシステムや紫外線を用いた殺菌システムのほうがふさわしいと考えられている。

編集=上田裕資

タグ:

連載

新型コロナウイルス特集

ForbesBrandVoice

人気記事