眠りがパフォーマンスを変えた FC東京の林選手が語る「睡眠力」

FC東京の林彰洋選手(c)F.C.TOKYO


──睡眠の効用については、サッカー選手だと本田圭佑選手がSNSで発信していたり、クリスティアーノ・ロナウド選手に睡眠コーチがいたりしますね。

レアル・マドリードのジネディーヌ・ジダン監督が、「現役時代、夜みんなが遊びに行く時間、僕は水を飲んでストレッチをして、たっぷり睡眠を取るようにしていた」という話を聞いたとき、あの天才と呼ばれる人でさえそのような行動をとっているのに、まだその場所にたどり着いていない僕のような選手が、それ以下のことしかやっていないのはダメじゃないかと思うようになりました。

ただ、そこで気になったのが、「どんなのが良い睡眠なのだろう? ただ寝るだけで、どれほどの効果があるのか?」という点でした。眠る前にスマホを見たりしていたら、寝つきが悪いのは知っていたので、スケジュールを変えるなど、より意識するようになりました。

──質の良い眠りが取れたときと、取れなかったときはやはり違いますか?

全然、違いますね。これは本人にしかわからないことだと思いますが、良い眠りができているときの試合でのパワーアップ具合というのを、みんなにも感じてほしいと思います。

僕は、試合の前日は、夜10時半には寝ますが、その時間は日頃からとても厳守していて、10時半に寝るためにはどういう行動を何時間前からとるかということも決めています。そして、翌日の朝8時まで10時間ほど眠ります。

それでも常に身体の疲れが全て取れて快適というわけではありませんが、頭の冴え方とか気持ちの快適さは自分のなかで感じています。それに、10時間寝た身体のだるさだったり、張りだったりというのは、早い段階で散歩や体のストレッチングをしたりすれば、普通のコンディションに戻せるものなのです。

試合の日であれば、起きてからピッチに立つまでに身体の調整はできるので、睡眠によるだるさよりも、睡眠によるパワーを貯蓄の方が重要ですね。それを睡眠以外で代替できるものはないと思ったので、いまはとてもこだわりを持ちながら睡眠に向き合っています。


(c)F.C.TOKYO

──「パワーを貯蓄する」というのは、心のエネルギーが十分に充電されるような感じでしょうか?

そうですね。例えば、ある試合で僕が決定的なミスをしたとき、またミスをするのではないかとか頭のなかでいろいろ思考を巡らせます。そういったものは考えれば考えるほど眠れなくなるし、試合前の緊張感にも繋がります。そして、次の試合では凄く慎重になる。

それを解消するために、とにかく寝るのです。意図的に。それができるようになってきて、悩みが悩みではなくなりました。

ただ、寝る時間を決めてしまうと、遅い時間にスマホやテレビを見たい、起きて何かやりたいというのは欲求との闘いです。試合前だと当たり前に睡眠を優先できるのですが、それ以外の日だと少しくらい起きていてもいいかなと思ってしまいます。

とても難しいことなのですが、自分で寝るということをコントロールする、それが「睡眠力」であり、休息の「コア」であると思っています。なんとなくスマホを見ていたら2時間経ってしまったとか、そういったことが日常では多いし、僕自身もそういう経験があるので、それに対する意識改革がカギであるなと。
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文=小林孝徳

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