SNSマーケティングを社会学的に考える


実際に芸能人などもその相関図を引用して発言していたことから、こうしたときは声が大きい人になびきがちだが、発信者の一貫性などを抜きには信じない方が良い。さらには、他の人が言っていることと比較することも重要だ。タイムラインはそう意識せずとも自分が見たいものを見る場になっているのだから。

「ファストなものに触れているんだ」「そういうコミュニケーションをしているんだ」と客観視することがとても大事であるし、SNSだけに固執するのではなく、別のソースにあたってみることも肝要だ。そういう意味では、古典的なメディアリテラシーの話にも帰着する。

特にスマホ普及以降、ユーザーの注意力はどんどんショートアテンションになっているという研究結果もある。放っておけば、長く集中できない私たちはファストなコミュニケーションに傾きがちになってしまう、そんな情報環境側の変化も作用している。

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そのように、ユーザーの姿勢や態度だけに帰責するのでもなく、技術・制度・環境の面でも対応することが求められているし、実際に進んでもいる。

例えばSNSでもファクトチェック機能の導入が進んでいることはとても重要なことであるし、炎上や誤情報の拡散のサーキットブレイカー機能も徐々に実装されつつある(最近の事例では、リプライ制限機能など)。

SNSで形成される世論を考える上でヒントになるキーワードを最後に紹介しておきたい。それが、社会学的でいう「バンドワゴン効果」だ。ひとつの意見が大きくなると、みんなが味方して雪だるま式に巨大化する現象を指す。みんなが遅れないように乗り込むバンドワゴンそのものだ。したがって、コミュニケーションの多様性と健全な客観性を保つためには、そのバンドワゴンに乗らないことを評価する仕組み、インセンティブ設計も効果をもたらすだろう。

現に、市場のような金融システムは「逆張り」することで収益機会があると考える人が一定程度いることが、システム全体を安定させることに寄与させているという指摘がある。これは個々人のマインドというより、そのような制度設計の視点である。バンドワゴンに乗っても損しないのであれば、人々は乗り放題になる。ファストな思考で、友敵構造を想定しながら多勢に無勢な方に与してしまうだろう。

だからこそ、ユーザーの意見を事後的に検証するシステムがあってもいいかもしれない(いまはすべて人の手でなされているが)。不正確な炎上や情報拡散に加担すると他のユーザーへの表示回数が減る、といったことだ。もちろんそれを受け入れられるかどうか、それ自身もユーザーに委ねるような設計であることは前提として、「速い思考」を「遅い思考」に接続するためのフィードバックこそがいま求められているのだ。

連載:SNSマーケティングを社会学的に考える
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文=天野 彬

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