放送作家・脚本家、「くまモン」の生みの親。

放送作家・脚本家の小山薫堂が「有意義なお金の使い方」を妄想する連載第59回。コロナショックの中、自宅の書斎でオンライン会議と掃除に明け暮れる筆者が、いま新しく始めようと考えていることとは……?


4月7日、東京都が出した緊急事態宣言を受け、僕はずっと自宅の書斎で仕事をして、週に一度だけ事務所に出社するという生活を続けている。特殊な状況の中でさまざまな発見をされている人は多いと思うが、僕もいくつか感じたことをしたためてみたい。

まずはオンラインでの仕事面から。オレンジ・アンド・パートナーズ(企画制作会社)での会議は約25名が参加するのだが、普段の会議だと副社長の軽部政治(連載第16回に詳しい)の声がでかく、アクションも大きくて、他のスタッフが萎縮し黙ってしまう。それで僕と軽部とあとひとりくらいで喋って物事が決まってしまうということが多々あった。

ところが同じメンバーでオンライン会議をしてみたら、これまで黙っていたスタッフが発言するようになった。つまり画面上で軽部の存在が“25分の1”になっているので、自然と話しやすくなるのだ。「人の存在を圧倒的に平等にしてしまう」というよき点がオンライン会議にはあった。

また、土曜はFM横浜、日曜は東京FMでラジオ番組のパーソナリティを務めているのだが、スタジオに行かずにオンラインで進行すること自体はすぐに慣れた。

とはいえ、もうひとりのパーソナリティと喋りはじめが被ってしまうことが何回もあり、同じ空間にいるときの「あ・うん」の呼吸、微妙な「間」の大切さをあらためて感じた。時間にすればほんのちょっとの時差、コンマ1秒レベルなのかもしれないが、場の空気を円滑に進めているのは、実はその時差を互いに読みあう行為にあるのではないかとひそかに思う。

恐るべし、掃除の効能


自粛で家にずっといることになるわけで、掃除がはかどっている人も多いことだろう。僕も書斎の埃をかぶったさまざまな代物が気になり、要るものと要らないものに選り分けようとカゴに放り込んだ。

掃除中には楽しい発見もあって、棚の奥に変わったラベルの「響17年」を見つけた。17年と言えば、ラインナップで最初に生産されたものの、ウイスキーブームの高まりにより生産数と需要のバランスが崩れ、原酒不足で販売終了となった代物。うれしくて1杯飲んでみたら、それはもうめくるめくおいしさだった。

「それにしても、このラベルはなんだろう?」と、インターネットで検索をかけてみたのがいけない。「美術館記念ボトル」という限定品で、現在どこもプレミア価格で販売していて、Yahoo! オークションではなんと60万円以上の値がついていた。つい「先に検索して、飲まずに売ればよかった!」と思ってしまう自らの小物さに恥じ入り、ウイスキーがちょっとほろ苦くなった……。

イラストレーション=サイトウユウスケ

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