今となっては、人々がZoomのことを話題にしない日はない。Zoomで会議をし、Zoomでヨガクラスに出る。ウィキペディアによれば、コロナ禍の前には1日の平均ユーザー数が1000万人しかいなかった同アプリは、この3月には約2億人に達しているということだ。
グーグルも、いままで法人ユーザー専用だったZoomと同種の会議アプリを、「グーグル ミート」と改称して、一般ユーザー向けにも無料で今月からサービスを開始した。もちろん、従来からスカイプやLINEでも同じことはできていたのだが、このビデオ会議の普及は必要に迫られ、大躍進した。
また、ビル・ゲイツも指摘しているように、コロナ禍でパンデミックは終わりということではなく、近い将来、もっと死亡率の高い感染症の世界的な流行になったときには、人口の密集する都市部にいたくないという意識も、人々の心にはある。
恒久的テレワーク体制に入った事業所も
実は、この都市部からのUターンのトレンドは、若者のライフスタイルとして新型コロナの前から予兆があった。
通勤渋滞を嫌う若者世代は、21世紀に入ってから近年は、一貫して都市部、それもダウンタウンでの便利な賃貸生活を好む傾向にあった。クルマを持たないため、全米各地で公共交通機関がアップグレードされ、ライトレールと呼ばれる路面電車も拡充された。ウーバーなどのライドシェアもこれを加速させていた。
しかし、この数年でその事情は変わりつつあり、若者の好みは世代回帰ともいうべき、古いライフスタイルに戻る傾向がある。国勢調査によれば、100万人以上の都市は成長率が鈍化、もしくはマイナスに転じている。ハリス・ポール社は、新型コロナ禍がこの転換を加速させていくだろうと予測している。
実際、コロナ禍による惨状ばかりが伝えられる一方、共働きが一般的なアメリカでは、子供と過ごす時間が持てたことを喜ぶ声は小さくない。
一般家庭では、子供の学校や稽古事への送り迎えなどの負担の分担はいつも夫婦間の重い問題になっていた。多くの世帯が、テレワークへの望みを持ちながら、それをおおっぴらに上司に打診することは、なにかと憚られていたのがこれまでだった。
しかし、こうしていったんテレワークがスタンダードになると、事務職を中心に、それを主張することになんのためらいもなくなると見られている。
ロサンゼルスのある会計事務所は、いち早くこの動きを見て取り、オフィスリースの更新契約が来たので事務員にアンケートを取り、アフターコロナでもテレワークを続けたいかと聞いたところ、全員がイエスと答えたので、事実上、恒久的テレワーク体制に入った。
たった1年で、失業率を全国平均で10%も上げてしまった不況から、少しずつ平常に戻る道を踏み出したアメリカだが、コロナ禍が残した影響は大きく、人々は、ますますこれまでとは違う価値観での仕事や住居の取捨選択に目を光らせている。アフターコロナに向けて、都会離れとテレワークは、今後ますます定着していくのかもしれない。
連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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