コンテンツのデジタル化を急激に進める一方で、芸人たちの収入減が止まらない。社内の大改革を行い、新基軸を次々と打ち出してきた大﨑洋会長は、この状況をどう受け止めているのか。会長は2時間にわたり、胸中を語った。
「なんやったっけ、あの四字熟語。変わらないものと変わるものがあるという意味の……『不易流行』だ」
いまの吉本興業は、松尾芭蕉が説いたというこの理念で言い表せる。
4月28日、日本最大のユーチューバープロダクションであるUUUMとの資本業務提携を発表した。外出自粛下の動画視聴時間増に合わせた動きのように見えたが、『ビリギャル』著者でもある社外取締役・坪田信貴が将来的なオンラインでの展開を見据えて1年前に発案。それがきっかけとなり、岡本昭彦社長の指揮のもと、契約が成立したプロジェクトだった。
また、劇場に足を運ばずともオンラインでコンテンツを楽しめる「#吉本自宅劇場」も若い芸人や社員の声によりスタートした。これにより、ツイッターやインスタグラムなどさまざまなプラットフォームでのエンタメ配信が可能になり、一気にオンライン化が加速した。
「これまでは、グランド花月の劇場に出て、地上波のテレビに出て、ゴールデンのいい枠で冠番組を持つことが芸人の夢とされてきた。だけどいまは、発信する手段がいろいろできて、物差しが多様になった」
ただし、と大﨑は強調する。
「リアルで会って相手の気持ちを読み取るコミュニケーションは、人類の基本。それはコロナ後もなくならないでしょう」
オンラインとオフラインの両輪体制は、大﨑が出した一つの解だ。