新型コロナがアート業界に与えた影響。オンライン化で可能性は広がっていくか?


──今回の大きなテーマでもある、「作家との対話」について、オンライン化で作家との距離が縮まることについてはどうお考えですか?

若林:以前から、「関係性のアート」という、大きなトレンドがあったんです。これは、作家が色々な関係性の中でアートを表現していくというムーブメントですね。それがコロナウイルスの一連の流れで、さらに浮き彫りになっていくかもしれません。

アートのプラットフォームの構造は、変化しています。以前は、限られたアートワールドの中でアートの価値を共有してきましたが、それも崩れていくかもしれません。

上原:そうですね。アートの風潮として、コミュニケーション重視型は最近出てきましたね。コンテンツから発生する繋がりや、会話するプロセスの中にアートを見出すという流れは加速すると思っています。

あとは作家とファンが繋がると、いい意味で、「モノの価値」から「ヒトの価値」に移行していくでしょう。作家の人間としての考え方に投資するという流れが来そうですね。



作家とファンの距離が近づくことで生まれる可能性


『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』の著者・山口周さんが言う、「意味を重んじる世界」になったからこそ、人に投資する世界になってくる。RUNDAでも作品というよりは、作家という“人”の意味に共鳴するという意思表示でツアーをやりたいと思っています。

僕はあくまで入り口としてツアーという形をとってますが、コミュニケーションをすること自体が作品になるというアプローチの作家もいます。そこに一般の方が参加すれば、繋がりのグラデーションが濃くなっていくような世界もありそうですね。

:今までは物質が作品だったのが、むしろ観る人側が作品を作れるというアートのあり方が見直されてきています。抽象的な指示さえも、作品になってしまう時代。オンラインでの関わり方で、作家とファンの距離が近づけばアートも生まれてくるんです。

実際に、インストラクション・アートというジャンルがあって、観た人が指示を実行することで成立するアートもあるんです。これはオンラインで取り入れやすいですよね。例えば、世界トップキュレーターのハンス・ウルリッヒ・オブリスト氏は、インスタグラムで「#doit」(やってみよ)というハッシュタグのもとインストラクション・アートを紹介しています。
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構成=初見真奈

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