新型コロナがアート業界に与えた影響。オンライン化で可能性は広がっていくか?


──新型コロナウイルスの影響で、今リアルな空間でアートを楽しむのにはどうしても制限がかかってしまいます。逆にオンラインだからこそできることや、広がっていく部分はありますか。

上原:制限があるというよりは、オンライン化でフィールドが変わってリーチも広がり、異なるアート体験が提供できる、と考えています。

最近の流れでは、リアルにあるものをデジタルに変換するものがコンテンツとして多いです。しかし、リアルとデジタルはフィールドが違うので、デジタルネイティブの人に届くようなコンテンツをゼロベースで考えなければいけないと感じています。

リアルの空間では情報が溢れているのに対して、オンラインでは受け取る情報量が狭くなります。だから、その人の視点で囁くように、その人の興味に密着して語らないと届かないんですよね。こういった構造の差を意識していく必要がありますね。

実際にRUNDAのようなオンラインツアーでも、音楽かけながら話したり、昔の資料もすぐに提示できたりとオンラインならではのメリットは多様にあります。



若林宏保(以下、若林):確かに新型コロナウイルスが与えたアートへのダメージは深かったです。その一方で、逆に間口が広がって、チャンスもあるというのは強く感じています。今までであれば時間指定のツアーに、わざわざ足を運ばなければいけませんでした。だから参加者も、時間に余裕がある方々に限られていたんです。

オンライン化によって、ビジネスパーソンに対するアートのハードルは下がってほしいですね。アートの思想や体験に、忙しいビジネスパーソンが触れることによって生まれる可能性に注目しています。実際に、現代アートをビジネスパーソンが見て解釈していくようなワークショップみたいなものも始まっているんです。

「モノの価値」から「ヒトの価値」へ


──コロナ前後でアートの価値というものも変わってくるのでしょうか。

上原:個人的に思うことですが、アートとアートでないものの境目が曖昧になりそうです。オンライン上で、作品が画像として並んでいくと、何がアートでアートではないのか、もしくはただの画像なのか、すべて一緒くたに見えてしまいます。

さらにオンライン上にある画像のほとんどが無料で公開されています。否が応でも作品の価値が大きく変わってくる気はしていますね。僕も答えは見えていませんが、オンライン上での作品の価値は、リアルな作品の価値とはまた異なる視点が必要になるでしょう。

若林:私もそう思います。アーティストとファンの繋がりや、オンラインでのオークションが増えてくると、プレーヤーが変わります。それに伴って、どういうアートがいいかという価値観も変化する。だから大転換が起きる可能性があります。

佐藤真木(以下、佐藤):従来的に、アート業界はビジネスのダイナミズムが即時的に作用しにくい業界なので、新しいことを取り入れるのが難しい面があります。ただ、今回のタイミングをきっかけに、アート界側も新たな流れを受け入れる素地が芽生えつつあるように思います。
次ページ > 「モノの価値」から「ヒトの価値」へ

構成=初見真奈

ForbesBrandVoice

人気記事