新型コロナ関連報道、国々で異なるメディアへの信頼度

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報道機関にとっての新型コロナウイルスはどうやら、好都合な場合もあるし、不都合な場合もあるようだ。オーディエンス数が急増しているメディアがある一方で、広告収入が激減し、かろうじて持ちこたえているメディアもある。

おそらく現状で注目すべきことは、ジャーナリストがこれまで以上の困難を強いられていることだろう。「フェイクニュース」と偽情報に悩まされる21世紀のデジタルメディア・エコシステムのなかで、ジャーナリストたちは、何が真実で、何が作り話なのかを見きわめようと奮闘している。

新型コロナウイルスの治療に消毒剤が使えると口にしたドナルド・トランプ米大統領についてのニュースであれ、負担に耐えかねる医療機関内の衝撃的な現状を伝える報道であれ、メディアの信頼性は、かつてないほど重要になっていると言えるだろう。

こうした状況を踏まえて、英世論調査会社ユーガブ(YouGov)は、新型コロナウイルスに関連した報道に対して高い信頼を置いている国と、そうではない国はどこかを調査した。

ベトナムは、中国と長い国境で接しているにもかかわらず、比較的早い時期に新型コロナウイルスを阻止することに成功した。5月20日現在、感染者数はわずか324人、死者はゼロというベトナムの戦略を、専門家は称賛している。

ユーガブの調査から、ベトナムでは、回答者の約9割が国内の新型コロナウイルス関連報道を信頼していると答えたことがわかった。とはいえ、割合がこれほど高いのは、ベトナム国内の厳しく容赦ないメディア事情と結びついている可能性が高い。ベトナムの共産党政権は、いまだにメディアを厳しく統制している。国際NGO団体「フリーダム・ハウス(Freedom House)」が毎年発表している世界各国の自由度報告書を見ると、ベトナムのスコアはかなりの下位に位置する。

中国の新型コロナウイル関連報道については、激しい国際的論争が起きている。とりわけ、武漢市における感染の規模や、本当の死者数が隠蔽されているのではないかという疑問が取り沙汰されているのだ。ベトナムと同様、中国のメディアもまた、当局の厳しい統制下にあるが、過半数を超える62%の国民が、「現在の危機に関する報道を信頼している」と回答した。

報道の自由が謳われている諸国では、事情はより複雑だ。とはいえ、一部の世界のリーダーたちはジャーナリストたちを執拗に攻撃しており、「報道の自由」という表現はかなり傷つけられている。ドイツでは54%が、メディアの新型コロナウイルス報道に信頼を置いていると回答した。この割合は、スペインは50%、イタリアは38%という結果だった。

英国のメディア状況は、ブレグジット問題によってひどく分断されてきた。新型コロナウイルスの報道に対する信頼に関する今回の調査結果で、同国の割合が31%と、最も低い部類に入ったことは驚くにあたらない。

同様に深刻な分断が進む米国では、「フェイクニュース」と「マスゴミ(lamestream media)」(トランプ大統領が自分に批判的なメディアにつけた侮蔑的な総称)に対するトランプ大統領の攻撃が、現在の危機で大きく目立っている。にもかかわらず、米国におけるメディアへの信頼度は、英国よりも高い。ユーガブの調査では、同国の新型コロナウイルス報道を信頼していると答えた人は42%に達した。

新型コロナウイルスに関するメディア報道を信頼していると答えた人の割合(調査期間:2020年5月5日から13日)


翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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