イタリアで営業再開。アフターコロナの外食産業は「サステナブル重視」が加速

徐々に再開を始めるイタリアのレストラン。だが、困惑の声も上がっている (GettyImages)

新型コロナウイルスの最も凄惨な打撃を受けた国の一つ、イタリアの本格的な封鎖解除がいよいよ始まった。

特に大きな影響を受けたレストラン事業者は喜び勇んで再始動へと張り切っていると思いきや、その多くが戸惑いを隠せないでいる。新たに打ち出された営業再開のルールが困難を極めるからだ。

「ガストロノミー」は過去のものに?


まず店舗の大きさに左右される。顧客と顧客の距離が最低でも2m離れなければならず、1度に同じテーブルにつけるのは基本的に2名まで。しかも客同士は対面で座ることはできず、斜めに座ることになるので2名席でも4名分のテーブル面積を要する。これでは100平米を超える店でもたった4、5組のゲストを入れるのが限界だ。

面積に限りがある店では、テーブルの真ん中に接触を避けるガラスのパーテーションを付ける案も浮上している。まるで刑務所の面会のようだという感も否めない。おまけに席を立つ時はマスクを着けねばならず、食事中は常に監視されるとあっては、とてもくつろいで美食に舌鼓を打てる雰囲気ではないだろう。

感染防止に必要な設備投資をして再開したところで採算が取れる見込みもない。よって最善の判断としてうかつに動かない事業者も出ている。

イタリアで再開するレストラン
屋外でも席ごとに区切られ、営業再開するローマのレストラン (GettyImages)

一流と呼ばれるレストラン、いわゆるファインダイニングは、食という快楽に直結した喜びを最大化させるべく進化を遂げてきた。洗練されたサービスとラグジュアリーな空間。数十人の多国籍チームが働く躍動感のあるキッチンから芸術的な一皿が生み出され、非日常の体験が提供される。世界中にいる顧客が何カ月も前から予約を取り、お金と時間をかけてたどり着き、数時間かけて幾皿ものコース料理を堪能するといったことが今までは普通に行われてきた。

しかし、このような「ガストロノミー」はもはや過去のものとなってきている。この封鎖期間中に、世界トップクラスのシェフたちはインスタグラムやウェビナーで盛んにそう発信していた。
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文=齋藤由佳子

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