働く場は守る。障害者が働く「いわきワイナリー」コロナに負けず

種類も豊富なオリジナルワイン(2019年 著者撮影)


障害者とともに無心で農作業に打ち込む


現在、ワイナリーの仕事をする知的障害・精神障害のある人たち20人は、農作業とワイン造りにあたっています。畑は1年中、手入れや摘み取りの仕事があります。醸造や、瓶詰め・ラベル貼りの仕事にも慣れています。

「細かいきっちりとした仕事が得意な人もいれば、少ししか作業できない人もいます。その人に合った仕事は、雑草との闘いや手入れなど、何かしらあるものです。体力を使うので大変ですが、スタッフも無心になれて、落ち着きます」

障害者に渡す給料(工賃)は、全国的な平均を上回り、月に2万円を超えるそうです。「働く日数は人それぞれで、ワインが売れれば、還元していきます。年に3万本を販売したいという目標があって、今は、およそ2万本です。地元の酒屋さんや道の駅、郡山・福島の百貨店で販売しています。ショップができて、団体客も増え、収穫祭も規模を大きくして1500人ぐらいが来ていました」

ワイナリーは地域との関わりが深く、地方創生に一役かっています。いわき市とは「農福商工連携」を結び、地元の商工会が支援しています。市民が参加できるイベントも多く、摘み取り・剪定・醸造・植樹の体験や、支援学校の実習もありました。


東京・恵比寿のイベントで、いわきの各店とコラボしたセット(2020年1月 著者撮影)

造る人に思いを馳せ、じっくりと味わう


東京都の恵比寿ガーデンプレイス内で1月、各地の特産品を紹介する「おいしいにっぽんフェス」が開かれ、今野さんと、娘のマネジャー・四家麻未さんに再会しました。浜通りのブースでは、ワインに、オリーブ漬けやスイーツを組み合わせたセットが人気でした。

その時、「今年は各地に出向いて、おいしさをもっと知ってもらいたい」という決意を伺いました。新型コロナウイルスの影響で自粛が続く今は、出張やイベントを取りやめ、コミュニケーションの場であるショップの営業を調整しています。メンバーは、変わらずに働いているそうです。

「福祉の現場は、もともと衛生に気をつけています。畑や作業場は広いですし、感染が少ない地域ということもあり、マスク・消毒をして、元気に通っています。飲食店や百貨店の休業で、売り上げは減ってしまいましたが……。働く場は失われずに、生活リズムが保てています」(今野さん)

「外出を控える中、ワインの様々な楽しみ方を伝えたい」と、スタッフが5月にオンラインショップのブログを始めました。最初のテーマは、「おうち焼き肉に合うワインは?」でした。ワイナリーの歴史を振り返り、働く人たちを思い浮かべながら、味わいたいワインです。

連載:元新聞記者のダイバーシティ・レポート
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文=なかのかおり

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