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2020.06.07 10:00

働く場は守る。障害者が働く「いわきワイナリー」コロナに負けず

種類も豊富なオリジナルワイン(2019年 著者撮影)

種類も豊富なオリジナルワイン(2019年 著者撮影)

福島県いわき市に、障害者が働く「いわきワイナリー」があります。ブドウを造り始めた矢先に東日本大震災が起きましたが、地域の人に支えられながらワインを造り、ブドウ畑を広げ、2018年にはワインが味わえるショップもオープンしました。

筆者は昨年、いわきを訪ねて代表の今野隆さんにインタビューし、今年1月、東京でイベント出店の際に再び取材しました。その後コロナ禍により販売は減ってしまいましたが、「いわきワイナリー」の働く場は失われず、農作業や醸造に励んでいます。

福島でブドウと夢を育てていたが…原発事故で一変


ワイナリーを始めた今野さんは、もともと福島県広野町でブドウ栽培をしていました。家族に障害があったことから、「農作業を通じて、ハンディのある人たちが地域で自立した生活を送ってほしい」と思っていました。福島の海側「浜通り」では、ブドウ栽培が盛んではなく、ナシの生産地でした。「ブドウもとれる」と確信して2009年、認定NPO法人「みどりの杜福祉会」を設立しました。

翌年には、就労継続支援B型事業所「就労支援センター未来工房」をオープンし、いわき市好間で耕作放棄地だった0.5ヘクタールの畑を開墾。メンバーやスタッフが、マスカットベリーAやメルロー等の苗木を植えました。

「数年後には、このブドウからオリジナルのワインを造ろう。ワインはその土地の味わいがあるものだから、いわきで造りたい、と未来を夢見ていました。メンバーは、夏は汗だくになって、冬は凍える寒さの中、作業をしました」

そんな中、東日本大震災が起きて、福島第一原発の事故により、広野町は半年の間、入れなくなりました。多くのメンバーが県外へ避難し、放射能の心配で通えなくなる人もいました。断水によってほとんどの作物が枯れてしまい、広野でのブドウ栽培をあきらめました。

そこで、屋内で作業できる宅配弁当作りを始めました。農業も継続し、収穫物はスクリーニング検査を受けて影響はないとわかり、ワイン造りをやってみようということになりました。


ショップ内カウンターからブドウ畑で働く人が見えた(2019年 著者撮影)

地元の支援も得てワイナリー建設を実現


震災から1年半後、オリジナルワイン造りのために、好間農園で再び、本格的なブドウ栽培に取り組みました。いわき市内で、もう一つの農園も始めました。2013年秋、好間農園でブドウを収穫することができました。

山梨県・勝沼のワイナリーに協力してもらい、収穫したブドウを運び、スタッフが何度も通って、初めてオリジナルのワインを造りました。「支援したい」という地元の人も増えました。二つ目のオリジナルワイン「いわき夢ワイン2014」が完成した際、200人が集まり、品質向上やマーケティングをサポートする「いわき夢ワインを育てる会」が設立されました。

2015年3月には「いわきワイナリー」の名称で、果実酒製造免許を取得し、秋から本格的にスタート。種類を増やし、24種のオリジナルワインができるようになっています。地元のナシでワインも造ります。

「皮ごと絞って、ブドウと同じように発酵させる。浮遊物が多くて、透明にするのに苦労しました」と今野さん。荒れ地だった高台の土地を、いわき市から借りられることになり、開墾して2018年、新たな農園とショップができました。
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文=なかのかおり

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