動物園・水族館のいきものたちはみんなに会える時を待っている

全国の動物園、水族館のスタッフは「その日」に備えて全力で準備していた(写真・野毛山動物園)


すみだ水族館

──休館中に誕生した3羽のペンギン。元気を与えられる名前をつけました──
https://www.sumida-aquarium.com/

東京スカイツリー(R)の開業とともに誕生した「すみだ水族館」。水深6mの大水槽や、すべてに名前がついているマゼランペンギンたち、そしてチンアナゴなど東京湾のかわいいいきものの展示で人気の水族館だ。総水量700トンの海水を完全人工海水で運用するなど、先進的な施設を備え、東京の中心という立地から多様な来場者に対応したさまざまなイベントを展開している。

大水槽の写真

他の施設同様に厳しい環境を強いられているが、すみだ水族館はペンギンの赤ちゃん誕生でスタッフは元気をもらっているようだ。

「この休館中、人気のマゼランペンギンの赤ちゃんが3羽誕生しました。8年連続で赤ちゃんを迎えることができ、3羽とも元気に成長しています。例年ですと来館者の方に成長を間近で見ていただき、名前を公募するのですが、今年は休館でそれがかないませんでした。飼育スタッフによって〈おもち〉〈おこめ〉〈きなこ〉と命名、皆様に元気や希望を与えられる存在になって欲しいと、日本の愛される食べ物にちなんだ名前です」

ペンギンのきなこの写真
カメラ目線の〈きなこ〉

なんとも可愛らしく、たくましい名前だ。45羽以上のマゼランペンギンは同社のHPで相関図があり楽しい世界観を醸し出しているが、このほか休館中のGW期間に〈緊急開催!チンアナゴ顔見せ祭り!〉という、「人のいない環境になれ警戒心が強くなってしまったチンアナゴにビデオ通話を使用してみなさまの顔を見せ声をかけていただくという取り組みを行うなど、精力的に情報を発信していた。

「少しでも、お家時間に楽しみを届けられるようにと考えていました。普段と変わらずいきものたちが過ごしている様子を見ていただきたいのです」

同館はコロナ禍が無ければ4月下旬にリニューアルを予定していたという。クラゲエリアを2倍の広さに拡張し、500匹のミズクラゲが漂う長径7mの水盤型水槽などが誕生する予定だ。

「再開後にお客様が安全・安心に楽しんでいただけるように施設の整備を準備しています。いきものたちもスタッフの尽力でいつもと同じく元気です。現時点では再開の日程は決まっていませんが、とても楽しみにしています」

水槽の清掃の様子
掃除する飼育員に近づくペンギン

すみだ水族館も他と同じく、スタッフを2チームの体制とし人員を制御しながらも感染防止対策を徹底。全館で再会に向け奮闘中だ。

本稿では3カ所の紹介にとどまったが、日本全国のすべての動物園、水族館が厳しい状況の中でいきものたちの命を守ってきた。自分たちの感染に最大限注意しながら、賢明ににできることを実践し、来るべき再開の時を待っていた。

その時はもう目の前だ。

緊急事態宣言の解除は、新しい試練を意味するかもしれない。コロナ禍以前とは違う運営を強いられるだろう。しかし来園者の笑顔のために、見事な復活を遂げると信じている。

文=坂元耕二

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