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「ノイラートが活躍した時代は、第一次世界大戦やスペイン風邪の影響でボロボロの状態でした。そういう時代背景にあって、復興のために必要となるデザインとは、言語の壁を超えて容易に認知できる無駄のないデザインでした。そこで生まれたアイソタイプが達成しようとしたのは、復興や衛生のために必要な情報をグラフィックデザインという新しいスキルで視覚的にわかりやすく伝達すること。つまりグラフィックデザインの歴史の始まりからしてすでに、感染症の復興と医療のコミュニケーションデザインはテーマだったはずです。とにかく、直感的に可視化してわかりやすく伝えられることが、グラフィックデザインの強みですね」

新型コロナウイルスの生存期間を示す「三角グラフ」の狙い


とはいえ、交通ルールのような比較的シンプルな情報を示す道路標識などと比べて、複雑な科学的情報をデザインに落とし込む際には苦労することもあるのではないか。そのような場合に太刀川の念頭にあるのは、サイエンス・コミュニケーションという学問分野だという。

非専門家に対して科学的なトピックをどのように伝えるべきかという研究は、海外の大学では盛んに行われているという。論文などが良い例だが、科学者は基本的に専門用語を用いてコミュニケーションをとるので、一般市民からすると「科学者のいってることはわからない」となってしまう。

そこで両者のあいだの橋渡しをする必要が出てくるのだが、この際に最も重要なことは「科学的ファクトを歪ませずにきちんと誤解なくシンプルに伝える」ことだ。

デザインにおいてもこの大前提は変わらない。しかし、当然シンプルにすれば情報量は減ってしまうわけで、そこが難しい場合もある。「科学的な情報をどう編集し、ビジュアライズするかというのが、サイエンスコミュニケーションに関わるデザイナーの腕の見せ所というわけです」と太刀川は語る。


新型コロナウイルスの生存期間を示すグラフ。参照した論文の内容が正確に伝わるように細部まで配慮されている。

上のグラフはPANDAIDに掲載されている新型コロナウイルスの生存期間を示す図だ。このグラフの特徴は、横軸で展開される値が三角形でデザインされているところだという。

「データの参照元である論文によると、コロナウイルスは3日間かけて徐々に『減衰する』と書かれています。もしこの論文で示されているファクトを通常の棒グラフによって表現してしまったら、ウイルスが徐々に減衰していくのではなく、3日間経過したときに初めて消滅するかのような印象を与えかねないですよね」

参照する論文と突き合わせながら、どのようなデザインにすれば正しく情報が伝わるのかを細かく検討し、誤解のない表現を生み出す作業が、デザインの現場においても非常に重要になってくる。

文=渡邊雄介

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