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手刺繍を施したセットアップは18万円と、これまでレナクナッタで取り扱ってきたアイテムとしては最高の価格帯となったが、レンタルでも20〜30万円はくだらないウエディングドレスとしては、かなりリーズナブルだ。西陣織の高級なイメージとその手頃感もあってか、プロジェクト公開とともに大きな反響を呼び、わずか24時間で300万円を売り上げる好スタートを切った。

「お客様にも安心してご購入いただけるよう試着会を予定していたのですが、それを待たずに完売してしまったのは予想外でした。常日頃から、私たちのものづくりに対する思いを理解してくださるお客様に恵まれているな……と感じていましたが、驚きと喜びが大きかったですね」

ものづくりを通して、大切な人やそこにある文化を守りたい


これまで「使われなくなったデッドストック」をメイン素材として使ってきたレナクナッタだが、供給量にも限りがあり、納得のいく質感を兼ね備えたものとなるとさらに見つけ出すのは難しい。ブランドのファンが増え、新しいアイテムを求める声が高まるなか、大河内が見いだしたのは、市場環境の変化で、その技術継承がおびやかされつつある日本のものづくりの世界だった。

京都に主な拠点を移して以降、先述の西陣織をはじめ、久留米絣や装束などの織物産業、あるいは金彩といった伝統工芸技術に目を向け、生産者や職人とのコラボレーションを本格化させた。新作アイテムを作るだけでなくワークショップやアートブックなど「技術に触れる」機会を設けることで、その根底にある文化を次世代へつなぐ試みとした。

どんな生産者や職人たちとパートナーシップを結ぶのか。そこにはビジネスとしての判断よりも、縁があるか、思いがあるかどうかが働くという。

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「もともとファッションを学んでいたわけではありませんし、別の学科で専門的にファッションを学び、本当の意味でファッションに対してパッションを持ち、名だたるブランドで働く友人たちも見てきました。私自身は彼らのような動機でファッションを捉えるというより、もっと個人的な動機なんです。真摯なものづくりをしているけど、『伝える』ことが苦手で、来年暮らしていけるかどうかもわからない……みたいな職人さんのために。

もしくは友人として、本当に尊敬できるものづくりをしていて、この人のために何か力になりたい……と思うような。そういうつながりのなかで、単に『着るとハッピーになれる服』ではなく、大切な人たちを助け、支えられるような服づくりをしたいんです」

今年2月に発表した久留米絣の巻きスカートは、夫が福岡・久留米の出身だったことから、織元の下川織物とつながり、実際に製作現場を見学し、その素材の風合いにほれ込んだことで実現した企画だった。また、現在商品開発を進める横浜シルクを使ったスカーフも、もともとは学生時代、彼女の出身地である横浜のスカーフ業者が主催するビジネスコンテストに応募し、大賞を受賞したことがきっかけだったという。

「社長とはFacebookでつながっていたのですが、今年3月に神奈川新聞の取材を受けた際、『私が生まれた横浜には横浜シルクがある。新しい展開ができれば』と話していたところ、それを見た社長が改めて連絡してくださったんです。『一緒に作りませんか』って。本当に、ご縁ってあるんだなぁと思います」

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文=大矢幸世 人物写真=小田駿一

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