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2020.05.28 16:00

マイナンバーカードがあれば、社員証も保険証も不要に。日本流デジタル・ガバメントとは?

(写真:shutterstock)

今、財布の中には何枚のカードが入っているだろう。運転免許証、健康保険証、キャッシュカード、クレジットカード、交通系ICカードなど、私たちの生活は、実に多くのカードに依存している。

平成27年、住民票を有する人に12桁の番号が付与されるマイナンバー制度が始まり、申請すれば、顔写真やICチップ付きのプラスチック製のカード、「マイナンバーカード」が交付されるようになった。本人確認書類として利用でき、住民票の写しなどの取得がラクになる。

しかし、令和2年4月1日現在のマイナンバーカードの交付率は約16%とまだ低い。これ以上、カードを増やしたくない、「マイナンバーカードを持つ利点もよく分からない」ことが大きな要因だろう。

確かに、今の時点でマイナンバーカードのメリットは限定的だ。

 ●本人確認書類としての利用
 顔写真付きなので、これ1枚でOK。

●コンビニエンスストアでの証明書の取得
 市区町村の窓口へ行かずとも、住民票の写しや印鑑登録証明が入手できる。
(*サービスを実施していない市区町村は、ここから確認>>

●オンラインでの確定申告(e-Tax)
 電子申告の際、ICチップに搭載された電子証明書により本人確認ができるので、税務署に行くことなく手続を完了できる。

●政府が運営するオンラインサービス「マイナポータル」の利用
 各種行政手続など自分に最適な行政サービスを検索でき、オンラインで申請手続ができる。

これらがマイナンバーカードを所有することによって可能になる、現在の主な項目である。しかし、マイナンバーカード取得の必要性として、このメリットだけにはとどまらない理由がある。


マイナンバーカードの見本

日本のデジタル・ガバメント化


昨今、デジタル技術の進歩は目覚ましい。世界的に見ても、デジタル化が社会に浸透し、ビジネスモデルをはじめ、人々のライフスタイルにも大きな変化をもたらしている。パソコンやスマートフォンなどの機器とネットワーク環境があれば、コミュニケーションはもちろんのこと、情報収集、物品の購入、支払い、諸手続など、多くの民間サービスが場所と時間を選ばず利用できるようになってきている。

その波は国や行政にも確実に届いている。少子高齢化の影響で、生産人口が減少の一途をたどる日本では、今後、生産性の低下が懸念される。また、大都市圏への人口集中により、地方との格差も問題視されている。こういった社会問題の解決への糸口が、社会全体のデジタル化だ。今まで市区町村の窓口に出向き、紙媒体で手続しなければならなかったものが、デジタル化で不要になれば、そのメリットは大きい。

例えば、

●個々の手続やサービスを、一貫してデジタルで完結させること

●一度提出した情報は、二度提出することを不要とすること

●複数の手続をワンストップで実現すること

これら3原則を実現すれば、サービスを提供する側にとっても受ける側にとっても、時間、労力、コストの大きな削減となり、効率が上がる。節約された時間や労力を、他の生産活動に使えることになるのだ。

さらに、データやサービスを連携させるプラットフォームを構築することによって、提供できるサービスの幅を広げ、質を向上させることもできる。官民の垣根を取り払えば、なおさらだ。これからデジタルネイティブの世代が増えてくれば、次々と新たなイノベーションが生まれる社会となるであろう。

「必要なサービスを、時間と場所を問わず、利用者にベストな形で提供すること」。「データとサービスの有機的連携」。この2つをデジタル化によって実現すれば、生産人口が減少しても、効率を上げて質の高い産業やサービスを提供し、イノベーションを創発する。そうすることによって、活力と経済力を維持することができる。これからの日本が目指すべき姿は、ここにあるのだ。もはやデジタルが恩恵をもたらす対象は若者だけではない。老若男女、国民一人一人の多様なニーズを満たす万能ツールとなるのだ。

マイナンバーカードで変わる日本の社会


日本では運転免許証、健康保険証をはじめ母子手帳や年金手帳など、さまざまな証明書類を所有、保管しなければならない。マイナンバーカードを申請して本人確認書類として使うだけでは持つ意味がないと思いがちだ。

実は、そうでもない。さまざまなサービスが順次導入されるロードマップが、既に描かれているのだ。具体的には、今後、健康保険証、おくすり手帳、印鑑登録証明、ハローワークカード、学生証などの機能が加わり、令和5年度には多くの活用サービスが本格運用に入る計画だ。

医療面も、これまで地域医療ネットワーク内のみで参照していた患者のデータが、本人の同意が得られれば、マイナンバーカードを利用し全国の医療機関・薬局の医師・歯科医師・薬剤師が患者の薬剤情報などを閲覧できるようになる。

将来的には事業者が実施する定期健康診断の情報の閲覧や電子処方箋の活用など、医師、医療機関、患者にとって利便性が格段に向上するだけでなく、医療のスピードや質さえ高める可能性がある。

また、前述の「マイナポータル」の環境も整備され、さらに多くの手続やサービスがデジタル化していく方向だ。

既に、認可保育園への入所申請や各種手当ての現況届けなど、地方公共団体の子育てに関するサービスの検索やオンライン申請など、さまざまなものが可能となっている。今後、引っ越しに関する諸手続や、死亡や相続手続のワンストップサービスの導入も計画されている。

他にも、行政機関や企業からの通知を確認できるようになって、子どもの予防接種の受診時期や税の納付の通知が届いたり、電子決済もできるようになっている。わざわざ電話で問い合わせたり、市区町村の窓口に出向いたりする必要がなくなる。今後の幅広い展開と高いポテンシャルが期待できそうだ。行政サービスの完全デジタル化も決して夢ではない。

昨今、台風などの自然災害による被害や、世界で猛威を振るう新型コロナウイルスなど、予期せぬ事態が国民生活に大きな影響を与えている。もし、今、日本に最先端のデジタル・ガバメントが構築されていたならば、生活状況はどう変わっていただろうか。

初めて受診する病院でも常用している薬やその方の過去の健康状態が確認でき、すぐに電子処方箋が発行されて、地元でないところでも、迅速に適切な医療処置が取られただろう。外出がままならない状況でも、入学、進学や引っ越しの手続を自宅ですることだって可能だっただろう。

国民はおのおのの状況に応じて、適宜、発信される最新情報を随時確認することによって、冷静で適切な行動をとることがきっとできたはずだ。予測不可能な有事の時にこそ、その効果を最大限発揮したに違いない。

こういった構想を知ると、マイナンバーカードを持つことが、理想社会に近づくために個人としてできる一歩のような気もしてくる。現時点でのメリットだけではなく、これから拡大し展開する活用シーンに目を向けてみるのだ。

マイナンバーカードの保有率が上がれば、導入時期を早めようとするサービスが増えるだろう。また、新たな民間活用のアイデアが発想されて、イノベーションにつながるかもしれない。可能性は無限大だ。


(写真:Getty Images)

マイナンバーカードの取得方法


マイナンバーカードは、郵送された通知カードの下についている「個人番号カード交付申請書」または「個人番号通知書」と顔写真があれば、簡単に申請でき、初回交付は無料。申請方法は、「スマートフォン」「パソコン」から、オンラインでの申請が可能で、ほかにも「証明用写真機」や「郵便」でも可能だ。

(※オンラインでの交付申請後、受け取りまでに概ね1か月程度かかる。新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、地域の状況に応じて、適切な時期に受け取りに行くことを推奨する)

そして、今なら令和2年6月で終了する、現在の「キャッシュレス・消費者還元事業」に代わって、9月に導入される予定の「マイナポイント」という制度も活用できる。マイナンバーカードを取得し、所定の手続をすれば、令和2年9月から令和3年3月までの期間限定で、利用金額の25%のポイントが付与されるのだ(上限5,000円分まで)。

たった一枚のプラスチックのカードが、社会を、そしてわれわれの生活を、大きく変えていく──そう考えると、まずはマイナンバーカードを持ってみようかという気持ちになる。

マイナンバーカード総合サイトはこちら>>(地方公共団体情報システム機構)

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