ビジネス

2020.05.27

リモートワークの救世主、ズーム創業者が語る「コロナ騒乱の舞台裏」

Zoom Video Communications 創業者兼CEO エリック・ユアン

5月25日発売のForbes JAPAN7月号は、「パンデミックVSビリオネア 変革を先導せよ」特集。Forbes恒例の「世界長者番付」と「日本長者番付」の2020年版を発表、米Forbes誌が総力を上げて取材した豪華ビリオネアのインタビューを一挙公開する。

今年の世界長者番付で初めてランク入りを果たした、クラウド型ビデオ会議サービス「ズーム(Zoom)」の創業者でCEOのエリック・ユアン。ズームは一躍、withコロナ時代に欠かせない、リモートワークの“救世主”となったが、認知度の高まりとともに、懸念や不安も指摘されている。いま一番アツい会議ツールの裏側を本人に聞いた。 


クラウド型ビデオ会議サービス「ズーム(Zoom)」のエリック・ユアンCEO(50)の子供たちはようやく、父親の仕事に関心をもつようになったという。

「どんな仕事をしているか、娘に聞かれたことがなかったんです。それが初めて、『パパ、ズームで手を挙げるとき、どうすればいいの?』と聞かれましたよ」

ユアンは笑顔でそう話す。大学1年生になった息子も使い始めたそうだ。

新型コロナウイルスが世界を席巻した結果、都市は封鎖され、学校は閉鎖に追い込まれている。そうしたなか、ズームは仕事で必須のツールとして台頭。学生はオンライン講義を受け、人々はバーチャル誕生パーティーやズーム飲み会、ヨガレッスン教室を通じてつながっている。

3月28日(土)には1日だけで、全世界で300万人近くがズームのアプリをスマホにダウンロードした。モバイル調査会社アップトピアによると、これはズームにとっての最高記録で、2019年4月にズームが行ったIPO(新規株式公開)以降、5900万人以上がダウンロードしている。

ズームの経営状況も大幅に変わった。IPO以降、株価は143%も上昇している。3月中旬、S&P500が11%も下落するなか、44%を維持。同社の時価総額は420億ドルに達した。ユアンも純資産が55億ドルとなり、今年のForbes U.S.のビリオネアリスト(293位)に名を連ねている。

もっともパンデミックの前から、ズームは好調だった。サムスンやウォルマートを含む、少なくとも8万1000社の顧客を抱え、収益は6億2300万ドルに上る(20年1月までの会計年度)。

ズームが躍進した背景には、ユアンがパンデミックを受けて19カ国以上の教育関係者に無料でズームを提供する決断を下したことにある。これに加え、無料の基本プラン(100人の参加者までホスト可能、無制限の1対1ミーティング、グループミーティングは40分まで)を使っているユーザーがいる。

ズームはこの無料サービスでどの程度のコストを負担しているかを明かさないが、米投資会社スティーフルのアナリスト、トム・ロデリックは3000万〜5000万ドルだと見積もっている。

「そんなに難しい決断ではありませんでしたよ」と、ユアンは振り返る。

「このような特異な状況下では、コストや粗利、処理能力など二の次なのです」
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文=アレックス・コンラッド 写真=イーサン・パインズ 翻訳=フォーブス ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 7月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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