ビジネス

2020.05.27

リモートワークの救世主、ズーム創業者が語る「コロナ騒乱の舞台裏」

Zoom Video Communications 創業者兼CEO エリック・ユアン


パンデミック終息後の働き方




とはいえ、歴史上、どのような会社もこれほど多くのユーザーを短期間で獲得したことはないだろう。はたして、ズームはこのペースについていけるのか?

ユアンは心配していない。彼のチームはさらなる在宅勤務・在宅学習機能の開発を進めている。また、ズームが抱える17のデータセンターは、通常の100倍以上のインターネットトラフィックの急上昇にも耐えうる、とユアンは語る。

「クラウドが素晴らしいのは、理論的には容量が無限であることです」

ただ一部のユーザーは、動画の質が落ちたり、アクセスするのに時間がかかったりするトラブルを経験している。ズームも3月23日、不便が生じたことを認めた。

セキュリティーやプライバシー関連の研究者から批判もされている。3月にはテック系メディア「マザーボード」が、ズームがフェイスブックにデータを送っている事実を突き止めた。ズームは、端末の種類や画面のサイズ、使用言語、ユーザーのタイムゾーンといったメタデータしか送っていない、と釈明したが、ユアンは後日謝罪し、コードを削除したことを発表している。

このパンデミックが終息を迎えたとき、ズームはどうなっているだろうか。

アナリストたちは、株価こそ落ち着くと予測するが、世の企業の多くは地代を節約し、通勤時間を効率化するべくリモートワークへ移行する、と考えている。金融企業RBCグループのアレックス・ズーキンは、無料ユーザーを有料ユーザーに変えることができれば、ズームは長期的には利益を得られるはずだ、と話す。

ユアンは、ズームの運営と学生の支援に結びつかない社内の計画を凍結するように指示した。また営業やマーケティングの役員にも、今の流れに便乗しないよう釘を刺したと言う。一方で、全従業員に2週間の給与に相当するボーナスを支給することを承認している。ユアンは言う。

「チームには、『こういう危機ではマーケティングや営業にではなく、 顧客に集中しよう』と伝えています。不幸に便乗して稼ぐのは、企業文化として最低ですから」


エリック・ユアン◎中国・山東省出身。山東科技大学で応用数学とコンピュータ科学を専攻。ビデオ会議ツールWebexを経て、2011年にズームを創業。Forbes U.S.の2020年版ビリオネアリストで293位にランクインした。

これまで世界をリードしてきたビリオネアや起業家はこの危機にどう立ち向かったのか。エリック・ユアンのほか、巨額の赤字に揺れるソフトバンクグループCEOの孫正義や、オラクル創業者のラリー・エリソンがハワイでつくる「実験ユートピア」、米テック業界No.1の女性富豪がつくるスタートアップなど、注目の特集をぜひお見逃しなく。

文=アレックス・コンラッド 写真=イーサン・パインズ 翻訳=フォーブス ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 7月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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