「免疫パスポート」実現を目指すスタートアップFaceFirstの挑戦

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新型コロナウイルスの感染拡大が収束し、人々が再び国境を超えるようになると、各国政府は旅行者がウイルスに感染していないことを証明する情報を求めるようになるだろう。企業も自社の従業員が第2波の発生源になることを防ぐための手立てを講じるだろう。

米国と英国では、こうしたニーズに応えるため、人々の健康を監視するシステムの構築を目指すスタートアップが登場している。

そのうちの1社が、カリフォルニア州エンシノに本拠を置く顔認識技術企業「FaceFirst」だ。同社の設立は2007年で、これまで1040万ドル(約11億円)を調達している。同社は、医療提供者からの情報に基づく“新型コロナウイルス免疫獲得者データベース”の構築を目指している。

専用のアプリにユーザーの免疫状態が記録され、顔認識技術を使って本人確認を行うという。FaceFirstのCEOのPeter Treppによると、企業や国境管理の担当者は、このアプリでユーザーが受けたテストの種類や、移動の履歴、抗体検査の記録を確認できる。このアプリは、いわゆる「免疫パスポート」の役割を果たすことになる。

「航空会社はウイルスに感染していないと思われる人や、免疫を持った人だけを搭乗させることができるようになる」とTreppは話す。

「ワクチン接種における優先順位の把握も可能になる。金持ちや地位の高い人ではなく、前線で働く必要があり、他人に感染させてしまう恐れのあるような人たちが先にワクチンを接種するべきだ」と彼は言う。

新型コロナウイルスの第2波を防ぐ上で、Treppは免疫パスポートこそが最も有効な対応策だと考えている。「感染の有無や検査履歴を電話で確認し、エクセルに入力するのは馬鹿げている。中央集権型のシステムの方がはるかに効果的だ」とTreppは話す。

プライバシーに対する懸念

人々の診療記録を管理するシステムには、常にプライバシーの問題がつきまとう。アメリカ自由人権協会(ACLU)は今週、免疫パスポートが人々のプライバシーを侵害するとして警鐘を鳴らした。

これに対し、Treppは自社のデータベースがオプトインしたユーザー限定であり、個人を特定できる情報はユーザーの端末にのみ保管されることを明確にした。

「個人情報はアップロードされず、いかなる政府や組織もそれらの情報を得ることはできない」と彼は述べた。
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編集=上田裕資

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