「免疫パスポート」実現を目指すスタートアップFaceFirstの挑戦

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しかし、免疫パスポートが市民の自由を侵す可能性はある。ACLUは、免疫パスポートによって人々が免疫のある人と、そうでない人に区分けされる可能性があると指摘する。

「免疫のある人だけが職を得て、そうでない人は生活が困難になるかもしれない」とACLUは警鐘を鳴らす。もしそうなれば、仕事を得るために敢えて新型コロナウイルスに感染して抗体を得ようとする人が現れるかもしれない。

しかし、抗体があっても再び新型コロナウイルスに感染しない保証はないし、防御性がいつまで持続するかは不明だ。

政府の後押しが必要

Treppは、免疫パスポートを実現させるためには、政府や議会の後押しが必要だと考えている。彼は、米政府と間接的に議論を行っているというが、詳細は明らかにしていない。今年4月の議会記録によると、FaceFirstはロビー活動に1万ドルを費やしているが、これは免疫パスポートとは無関係だとTreppは主張した。

しかし、記録には同社が保健福祉省とホワイトハウスの担当者と「バイオメトリクス及び、顔認識技術を用いた入出国スクリーニングに関する問題」について協議したと記されている。

英国では、「Onfido」がFaceFirstと似た取り組みをしている。Onfidoは、英国のチャレンジャー・バンク「Monzo」に認証技術を提供していることで知られ、これまでに投資家から2億6500万ドルを調達している。

同社が目指すのは、「個人情報を一切開示することなく、市民や旅行者、従業員が免疫を証明するためのシステム」だ。Onfidoの共同創業者でCEOのHusayn Kassaiは、声明の中で次のように述べている。

「我々のテクノロジーは、ID写真と自撮り動画でひもづけることに用いられている。モバイル搭乗券のようにデジタルな検査済証がスマホ上に表示される」

Onfidoは、英議会の科学・技術委員会から免疫パスポートの提案書を提出するよう求められている。「他国の政府とも協議を行っており、プロセスをなるべくシームレスにしていきたい」とKassaiは述べている。

ロイターによると、エストニア政府は既に国内の企業で免疫パスポートの導入テストを実施しているという。アプリを開発したのは、同国発のユニコーン企業である配車サービスの「Bolt」と決済サービスの「TransferWise」の創業者たちだ。今後は、他国も何らかの形で同様の取組みを行うことが予想される。

編集=上田裕資

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