アートに救われた。8000キロを超えた奇跡の邂逅

Forbes JAPANなどで活躍するフォトグラファーの小田駿一さんが、この歴史的な非常事態宣言下の東京の街を写真に残したい、伝えたいと、撮影活動を続けています。この連載では撮影した写真と、写真家の思いをお伝えしていきます。今回はこの緊急事態下の自身の活動や出会いを通じて、写真やアートの可能性を実感したエピソードを紹介してくれました。(編集部)

「Art Can Save Me!」


「あなたの作品を買いたいのだけど」。突然、フェイスブックメッセンジャーに知らないデンマーク人の方から連絡が届いた。「どうせ冷やかしだろう」と心の中では呟きながら、私が取り組んでいる写真集の制作や飲食店支援のためのクラウドファンディングをしているプロジェクトサイトを案内する。「まぁ、日本語はわからないだろうから、諦めるだろうなぁ……」と思いながら。

すると「どうしても日本語でないと会員登録ができない、、、ほかに手段はないか」と返信が。彼の熱意にほだされて、なんどもメッセージのやり取りをして、彼は最終的に作品を買ってくれた。そして「きっと君の才能は、その才能は君をいつかデンマークに呼び寄せる。そしたら、会おうね」と。

もう、それはもう、驚いた。私の名前も、顔も、評判も、今回の作品の意味も、きっと知らないであろう、彼は、私の作品を見て気に入り、海を超えて、求めてくれた。そして、なんとも優しい言葉までかけてくれたのだ。

どうやら、現在私が参加している「Art Can Save Us」というアートチャリティーのインスタグラムでたまたま見つけて、気に入ってくれたらしい。写真表現は、言語も、地理的な距離も、全てを超えてつなげてくれる。何も知らない誰かが、私の作品を愛してくれる。フォトグラファーになって、一番嬉しい瞬間だったかもしれない。

緊急事態宣言が発出されて以降、クラウドファンディングをやったり、アートチャリティーに参加したり、アートがだれかを助けられると思って活動していたが、「Art Can Save Me」だったなぁと、しみじみと感じた出来事だった。

なんでこの出来事が私をこんなに感動させたのか?少しお話ししようと思う。

小田駿一 Night Order
「Art Can Save Us」に出品している作品
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文、写真=小田駿一

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