エンジンが傑作なうえに、ステアリングフィールとブレーキのペダルの剛性感も文句なし。コーナーに差し掛かった時のターンインからコーナーの出口まで、ちょうど良い重さと手応えでドライバーが狙った通りのラインをぴったりとトレースしてくれる。この抜群の安定性はまさにリアウィングと新しいディフューザーの効果、そしてより剛性が上がったシャシーの成果と言える。
言うまでもなく、ブレーキのフィーリングと効き目にも拍手だ。これはポルシェが非常に得意とする分野だね。僕が乗った車両には、オプションとしての6ピストン付きのカーボンセラミック・ブレーキが付いていたけど、踏んだ瞬間から、英語で言う「バイト」、つまり「噛みつく」感じが鋭く、踏み続ければ続けるほど、ペダルの剛性感が増して、クルマが素早く安定しつつ減速してくれる。
急なブレーキングをすると、多少横の揺れを感じるけれど、センターコンソールに付いているPASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント)、つまり、スポーツ・ダンパーのスイッチを押すと、瞬間的にボディコントロールとリアのサスペンションが硬くなることによって、クルマの姿勢は安定する。
ワインディングロードやサーキット走行に絶妙なバランスだろう。サスペンションはそれなりに硬いけど、高いボディー剛性のおかげで荒れた路面でも乗り心地は本格的なスポーツカーとは思えないほどしなやか。乗れば乗るほど、病みつきになる。こんなに自信を与えてくれたスポーツカーは久しぶりだった。
最高速時はテールに122kgのダウンフォース
性能と走りがあまりにも優れているので、スタイリングを忘れるところだった。「718ケイマンGT4」のノーズとシルエットはポルシェの代表的なプロポーションになっているので、すぐに親しみを感じる。フロントのスプリッターに抉られたエアインテークは偉大なブレーキを冷やしてくれるし、ドアのすぐ後ろのサイド・エア・インテークはエンジンベイに必要な冷却用空気を送り込む。
大型リアウイングや新開発のリア・ディフューザーなどと相まって、302km/hの最高速で走行する際には、テールになんと122kgのダウンフォースを発生する。室内もポルシェらしい高級感とスポーティ感を足して2で割ったような高い完成度。
さて、結論。扱いやすい420psのパワー、巨大なリアウィングと新しいディフューザーのダウンフォース効果、偉大なブレーキの効き目、安定したスポーティなハンドリングを誇るケイマンGT4。コストパフォーマンスの高いスポーツカーに乗りたければ、この1台をおすすめる。唯一のネックは1200万円のプライスかな。6速MTに乗りたくなければ、ぜひPDK仕様の登場を待とうではないか。
連載:国際モータージャーナリスト、ピーターライオンの連載
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