ポジティブ・ジャーナリズムの現場から

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コロナ禍にあって世間の高い関心を集める「賭けマージャン」問題が、思わぬかたちでメディアと権力の関係について再考を迫っているようだ。

東京高等検察庁の黒川弘務検事長が、緊急事態宣言が出されている中で、新聞記者らと賭けマージャンをした問題で、黒川氏の辞職が承認された。週刊文春のスクープで、黒川氏の定年延長や検察庁法改正案をめぐる一連の問題は急転直下の動きを見せ、誰も予想できなかった事態となっている。

検察ナンバー2という黒川氏の立場や、置かれていた状況も踏まえると、刑法の賭博罪に問われる「賭けマージャン」について弁解の余地はない。

一方で、この問題では、単なる「賭けマージャン」スキャンダルにとどまらず、強い国家権力そのものである検察官と、権力監視の役割を担う報道機関の記者らが、記者宅で数年間にわたって賭けマージャンをしていたという「親密ぶり」が明らかにされた。「メディアと権力」という観点でも、国民に衝撃を与え、関心を集めている。

「癒着」「ズブズブ」メディアへの失望の声


インターネット上ではツイッターの投稿を中心に、メディアへの怒りと落胆、失望の声であふれている。黒川氏と記者らの親密な交流について、「癒着」「ズブズブの関係」などと批判や疑問の声が多く見られる。当然の反応だと思う。

私は、去年まで大手メディアの記者として、今回の賭けマージャンに参加していた新聞社の社員3人と同じく、社会部に所属し、捜査当局を担当していた。(余談だが、私がもっとも力を入れて取材した事件の一つにプロ野球・読売巨人軍の投手らによる野球賭博事件がある。捜査を受け、ドラフト1位投手も事実上の引退に追い込まれた)

残念ながら私は今回の大先輩3人ほど優秀な記者ではなかったものの、リアルに想像できたり、内情を察したりするものもある。
自分の経験をもとに、メディアと権力の関係について改めて考える機会としたい。

メディアが権力を監視するって、一体どういうことなんだろう?
記者が権力側(当局)に食い込もうとするのは、何のためなんだろう?

文春記事や朝日新聞の説明などによると、黒川氏との賭けマージャンに参加したのは、新聞社の社員3人。

・産経新聞社会部のA記者
(B記者の後輩で司法クラブの元検察担当。現在は裁判担当)
・産経新聞社会部のB記者 ※次長
(今年初めまで司法クラブキャップ。黒川氏に最も食い込む)
・朝日新聞経営企画室のC氏
(元社会部記者で検察担当。50歳代)

この情報だけで3人とも「事件エリート」であることが読みとれる。

A記者とB記者は、だいたい30歳代後半~40歳代ぐらいとみられる。B記者は司法クラブキャップ経験者であり、社会部次長なので、いわゆる「デスク」だ。司法担当が長いという情報から、検察担当の経験もあるとみられる。

大手メディアの社会部で、事件系といわれる担当は大きく2つに分けられる。警視庁・警察庁などの「警察系」と、法務検察と裁判を担当する「司法系」である。それぞれ記者クラブに所属する。

その中で、取材がもっとも困難で競争も激しいとされるのが、「司法系」で東京地検特捜部の動きを主に取材する検察担当記者たちである。彼らは、検察を意味する「Prosecution」の頭文字から「P担」(ぴーたん)と呼ばれる。花形ポジションの一つだ。

A記者、B記者、C氏の3人は、いずれもP担経験者とみられる。

各社ともP担には、地方で事件の取材競争を勝ち抜いてきた記者をあてる。社会部長にもP担経験者は多い。読売新聞グループ本社の山口寿一社長は伝説的なP担として有名だ。

文=島 契嗣

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