「マスク拒否」を貫くトランプが見据える米国大統領選挙

ドナルド・トランプ大統領(Drew Angerer/Getty Images)

ミシガン州司法長官のダナ・ネッセルは5月21日にトランプ大統領がマスクを着用せずに、フォードの工場を視察したことを強く非難し、「予想されたことではあるが、極めて不適当なふるまいだ」と述べた。

ホイットマー州知事は、工場内でのマスク着用を義務づけており、フォードの社内規定もそれに従うものだが、トランプは記者団の前にマスクを着用せず現れ、「メディアの連中を喜ばせたくない」などと発言した。

ネッセル司法長官はこのニュースを報じたCNNのインタビューで「大統領はまるで駄々っ子のように命令に従うことを拒んでいる。これは笑い事ではない」と述べた。

ネッセルは20日のトランプ宛ての公開書簡で、彼にマスクの着用を促し、「これは法的な責任であると同時に、社会や倫理上の責任でもある」と訴えていた。

しかし、その要求を拒んだトランプについてネッセルは、「彼は2017年に大統領に就任して以来、同じメッセージを発信し続けている。彼は国民の安全や健康、福祉に関心がない」と述べた。

トランプがマスク無しで工場に立ち入った結果、どのような影響が及ぶかを尋ねられたネッセルは、「最悪の事態として想定できるのは、大統領が持ち込んだウイルスに誰かが感染し、工場を再び閉鎖しなければならなくなるケースだ。これは現実に起こり得る事態だ」と話した。

「彼は非常識な人物であり、彼のような人が米国の大統領であることが恥ずかしい。ミシガン州の人々は11月の大統領選挙の際にこの事実を思い出してほしい。彼は周囲の人々の安全をないがしろにし、国民の福祉に関心を持たず、マスクの着用という極めて簡単なことすら出来ないほど人々に対する敬意に乏しい人物なのだ」と、ネッセルは話した。

フォードは20日、操業を再開したばかりのミシガン州のシカゴとディアボーンの工場を一時的に閉鎖していた。これは、工場の従業員が新型コロナウイルスの検査で陽性が判明したための措置だった。

ボルチモア市長のバーナード・ヤングは21日、大統領に対し「急を要さない工場への訪問は国民に誤ったメッセージを送ることになる」として、フォードの工場訪問をキャンセルするよう求めていた。

大統領選に向けたアピールの可能性


トランプはパンデミックの発生以降に米国の3カ所の工場を訪れており、フォードの工場以外でもマスクを着用しなかった。彼が訪れた3州、アリゾナとペンシルバニア、ミシガンは2020年の米国大統領選挙において重要拠点となる州に位置づけられている。

5月上旬にはトランプの身の回りの世話をするスタッフや、副大統領のマイク・ペンスの報道官のケイティ・ミラーが新型コロナウイルスに感染したことが明るみに出た。それ以降、ペンスはマスクの着用を開始したが、トランプは着用を拒み「検査を度々行っている」と弁明した。

それと同時にトランプは、「世間は検査を過大評価している」と述べ、ミラー報道官の場合は、複数回に渡り陰性と判定された後に突如、陽性判定を受けたと述べた。v

編集=上田裕資

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