「がん治療」は新型コロナと似ている 志村けんの死が衝撃だった理由

撮影・岩澤倫彦氏


養うべきは、がん情報のリテラシー、「目利き力」


ノーベル賞を受賞した本庶佑氏は、私の単独インタビューに対して、「明確なエビデンスがない医療をビジネスとしてやるのは〝医の倫理〟に反する」と断言した。

一方で、法律で規制するのは難しいため、「患者が情報の真偽を目利きする、リテラシーを持つことが唯一の対策」と指摘している。リテラシーとは、がん情報を「目利きする力」と言ってもいいだろう。

難しいのは「標準治療」だけで、すべて解決できるわけではないことだ。一定の割合で、標準治療でも治らないケースや、長期間の治療で抗がん剤が効かなくなるケースなど、患者によって様々なパターンがある。

では、その先の時間を、患者はどのように生きていくのか?

私は3年間にわたって、がん患者の在宅生活を支援する、緩和ケア診療所「いっぽ」を密着取材してきた。

緩和ケアを受ければ悩みは消える、というお花畑のような景色はない。だからといって、絶望だけが支配する生活ではなかった。間近に迫った死を受け入れると、その人にとって一番大切なものがはっきり見えてくるからだ。

限られた時間をどのように生きるのか、それは私たちすべてに共通するテーマかもしれない。

やってはいけない がん治療』(世界文化社刊)は、がんになった時に使っていただきたい実用書であり、がん患者の本音や治療の現実、実生活をリアルに描いた記録の書でもある。

〝その日〟が訪れた時、少しでもお役に立つことができれば、幸甚の限りだ。



岩澤倫彦◎ジャーナリスト、ドキュメンタリー作家。報道番組ディレクターとして救急医療、脳死臓器移植などのテーマに携わり、「血液製剤のC型肝炎ウィルス混入」スクープで新聞協会賞、米・ピーボディ賞を受賞。著書に『バリウム検査は危ない 1000万人のリスクと600億円利権のカラクリ』(小学館)、『やってはいけない歯科治療』(小学館新書)などがある。

文=岩澤倫彦

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