コロナ後も「絶対にデータ分析はやめてはいけない!」初動の悔い、第2波の教訓に

アルベルトの松本壮志代表取締役社長


──松本社長が掲げる「CATALYST(カタリスト)戦略」は、クラスター班の仕事にも貢献しました。

カタリストは直訳すると触媒。個社、個社で持っているデータでは、先端技術を使ったアルゴリスムで分析しても、データの価値を上げるのに限界がある。重要なのは、違うセクターのデータを掛け合わせた時に、相互に対して、新たなデータ価値を生み出すこと。これがカタリスト戦略の基本的な考え方で、プラットフォーマーとしてではなく、あくまでも黒子に徹して産業間のデータをつないでデータの価値を上げていくという戦略だ。

今回のクラスター班のプロジェクトで貢献ができているのも、特定産業に依存している分析会社にはない、データ突合技術やビッグデータのハンドリング技術を有しているからだ。

──厚労省のビッグデータ分析支援を発表し、アルベルトの4月の株価は3月比で8割弱も上昇しました。松本社長はもともと金融やコンサルティング業界が長いですが、アルベルトの経営でどのような点に注力されてきましたか。

私が前職を引退してアルベルトに入社した2年半前、業績は低迷して、上場して一度も利益をあげたことがなく、時価総額も約20億円だった。

当時感じていたのは、AIというキーワードの中で、日本で勝ち組がまだ決まっていないということ。同時に、多くのスタートアップがあっても、技術の一点突破型の会社がほとんどだったことだ。これだけ技術潮流が早い業界の中で、技術の一点突破型の経営では一発逆転のホームランの可能性もあるが、三振も続く。逆に、特定技術、特定産業に依存しないプレーヤーになることで、圧倒的に収益力を上げられると考えた。

入社した時は、高い技術はあるものの「空飛ぶ冷蔵庫」を作っているような、夢を追っている会社だった。それを、実際に企業が抱えている課題解決のためにこの高い技術を使う社会実装に重点を置いた形に大きくシフトした。就任後からトヨタ自動車を始め、我々の重点産業分野の大手企業との業務提携を一気に6件締結した。2年で平均50%近い成長率が実現し、我々のプレゼンスがようやく発揮できるようになっている。
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文=成相通子 写真=帆足宗洋

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