密室で延々と続くあらかじめ“答え”の決まった質問の繰り返し。精神的な拷問に耐えがたくなり、苦しみから逃れるために心にもない虚偽自白をしてしまった、ということだろう。
S看護師には、その後、病院が弁護士をつけ、再び「鳴った」と言わされることはなかった。
署名を拒否し続けた看護師。その心理状態を捜査報告書から読み解く (Unsplash)
長時間の取り調べに疲れ。危うく認めるところだった
当初の捜査で「鳴った」と言わされ、危ういところで「正気」に戻り、署名を拒否したのだ。その際のS看護師の心理状態はどうだったのか。その後、再開された取り調べの中で見てみたい。2004年3月31日の捜査報告書、患者死亡から10カ月後のこと。S看護師の供述は、こう記してある。
「こんな大げさな話になるとは思わなかった。本当に軽い気持ちで事情聴取に応じていたのですが、その後(2003年)7月の取り調べの際に、あたかも私が嘘をついているかのように刑事さんに言われたのです。この取り調べで私は『もういい。何度呼吸器が鳴っていなかったと話しても聞き入れてもらえないのであれば、アラームを聞き漏らしたことにしよう。そう話して帰してもらおう』と思い、長時間の取り調べに疲れたこともあり、そう話した。
そしたら『聞き漏らしたのは私が寝ていたからだ』と警察に決めつけられたのです。私が聞き漏らしたという内容の調書ができあがり、その調書を読んでもらったのですが、いざ署名となったときに、私は『これではいけない。真実ではない。西山さんも正直に鳴っていないと話しているのに、本当に話がおかしくなる』と思いました。だから署名しなかったのです。翌日も、その翌日も、刑事さんから『鳴っていなかったか』と質問されましたが、私は『アラームは絶対に鳴っていない。鳴ったら気がつくはずです』と答えてきた」
さらに2カ月がたち、患者死亡から1年を過ぎた取り調べでも、2人に対して同じ質問が延々と続く。次は、2004年5月27日、西山さんが逮捕される約40日前の捜査報告書だ。