コロナ時代のアパレル企業の在り方 独ブランド「HUGO BOSS」の場合

新型コロナウイルスのパンデミックで影響で、ファッションショーがキャンセルされ、店舗は閉鎖された。売れ残りの在庫が積み重なっていく中、生き残りをかけてビジネスモデルを変えざるを得ないブランドが急増すると業界のアナリストは予測している。

このような厳しい状況にも関わらず、ヨーロッパのファッションブランドは最前線で働く医療従事者への支援を強化しており、多くの企業が防護服やマスク、手指消毒剤などを寄付するために生産を開始している。

特に対応が評価された国にドイツが挙げられているが、なかでもパンデミックへの対応が最も早かったヒューゴ ボスは、本社の総力を結集し、生産したマスクや防護服を老人ホームや消防署などの公共施設に提供。また、3月にはアメリカのオンライン売上の20%を赤十字社に寄付した。

ドイツ本社のコーポレートコミュニケーション部にこの不透明な時代をどのように乗り切るのか、その方針を尋ねた。



──ヒューゴ ボスは、ドイツ本社の全能力を駆使してコロナ危機への救援活動を支援しています。さらに、SNSを通して顧客に励ましのメッセージを送っています。ヒューゴ ボスが考えるファッション業界の役割とは?

お客様や従業員を守ることが最優先事項となり、経営面はその次となりました。

COVID-19の感染拡大防止への支援を責務として、我々の工場を、不足しているマスクや防護服、そしてフェイスシールドの生産へと切り替えました。マーケティング活動を通常に比ベて減らし、その代わりに、例えば「we are all in this together! (私たちは皆、 一人じゃない!)」という助け合いを強調するメッセージや前向きなストーリー、自粛生活のインスピレーションを与えるコンテンツを私たちのソーシャルメディアで発信しています。

──パンデミックは、製造業からサプライチェーン、小売業に至るまでファッション業界のあらゆる面で悪影響を与えています。これらに対してどのような対策や方針をお考えでしょうか?

このパンデミックは従来型のリテールビジネスが前代未聞の売上の低下と、サプライチェーンに関わる全てに弊害をもたらしていますが、経済的に弱い地域のサプライヤーやその従業員が特にその影響を受けました。生産拠点の皆さんの経済的安定を守るための解決策を共に見つけるために、現地のパートナーと緊密に連絡を取り合っています。コストカットのために見放すのではなく、責任を持つ心構えです。このような状況下、必要な調整をしていくことによって、最終的には現在の危機からより強くなって浮上するという希望を私たちは分かち合っていきたいのです。
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文=伊東エリーザ

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