コロナ時代のアパレル企業の在り方 独ブランド「HUGO BOSS」の場合

──専門家は、パンデミックによる価値観や優先順位の変化がファッション業界に新しい時代をもたらすと予測しています。

長引くパンデミックや今後の不況の影響で、消費の在り方が変化せざるを得ないですが、一度この状況が収束しても、変化した消費の形式は継続すると予測されます。ショッピングは、よりオンライン化するでしょう。消費者は今後も密を避け、オンラインでの高額消費に以前よりも抵抗がなくなるため、Eコマースチャネルはより促進するでしょう。

5月5日に発表をした 第一四半期のオンラインビジネスの売り上げと利益は非常に好調でした。第一四半期では我々の販路のほとんどが一時閉店を余儀なくされた中、グループ自社のオンラインビジネスは継続的に好調な売り上げを誇りました(+40%)。

──ファッションがトレンドや季節性の重視から、より個性的なブランド・アイデンティティの重視へと移行していくと言われています。ヒューゴ ボスのアイデンティティはどのように進化していくのでしょうか?

この不確かな時に消費者はプロフェッショナルな服を好み、何を購入するかについて慎重になっています。「より少なく、より良いものを」という信念を取り入れ、ミニマリストに見え、永遠に使えるアイテムを好む傾向があります。完璧なコレクションを作るために質とデザインに重点を置くことは、私たちのブランドの使命であり続けます。

サスティナビリティに関しても、お客様の高まるニーズに対応するため、これまでも環境に優しいカプセルコレクションを発表してきました。今後も引き続きその方針を貫きます。例えば、二つ目のヴィーガンスニーカー コレクションとなる、パイナップルの葉の繊維(Pinatex)を使ったスニーカーを展開済です。そしてウールの生産地を表示することで、透明性を大切にするトレーサブルウールを使用したメンズウェア、ウィメンズウェアを展開しています。


トレンドや季節性の重視からより個性的なブランドアイデンティティの重視へと移行していくと言われているファッション業界。消費者が質の良い商品とともに求めるのは、ブランドが表現する価値観だ。

コロナ禍がもたらした緊急事態は各国の行動力や効率性の差を明らかにし、改めて「信頼」という価値観を問う機会となった。

ヨーロッパに急速に広まったパンデミックで各国の国境が次々に封鎖されていく中、ドイツのメルケル首相が国民に協力と助け合いを呼びかけた演説は国境を越えて人々の心に響くものだった。またヒューゴ ボスを始めヨーロッパのアパレル企業のいち早い支援は、先の見えない状況下でひと筋の光を放つものだった。

世界中の人々が人の命やこれまでの何気ない生活がかけがえのないものだと再認識した今、ヒューゴ ボスが表す「信頼性」や「責任感」という価値観とともに、人に寄り添う企業のあり方が今求められているのではないだろうか。

文=伊東エリーザ

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