ビジネス

2020.05.23 20:00

「作業員のためのアプリ」で40億円を調達した28歳起業家の夢

UpKeepのCEO ライアン・チャン(Forbes US記事)

UpKeepのCEO ライアン・チャン(Forbes US記事)

2014年にカリフォルニア大学バークレー校を卒業したばかりのライアン・チャンは、浄水場で化学エンジニアとして勤務していた。当時の彼が直面した課題の一つが、様々な機器に発生する機械的なトラブルへの対処だった。

メンテナンスに用いるソフトウェアも存在したが、それらを用いると仕事のペースが大幅に落ちてしまうのだ。

「全てのソフトウェアはデスクトップベースのものだった。しかし、現場の作業員はデスクワークとは無縁の人々だ」とチャンは話す。

その後、チャンは作業員向けのモバイルベースのアプリを開発することを思い立った。彼は独学でコードの書き方を学び、夜間や週末に開発を進めていった。そして2016年に、施設管理者やメインテナンス担当者向けのアプリ「UpKeep」を完成させた。

UpKeepは現場の作業員たちが、修理が必要な機器をフラグ立てし、施設全体の修理状況を管理する機能を持つアプリだ。

現在28歳のチャンは、2018年のフォーブスの「30アンダー30」に選出されて注目を集め、先日のシリーズB資金調達で3600万ドル(約39億円)を調達した。今回の調達を主導したのはインサイトベンチャーズで、既存出資元のEmergence CapitalやBattery Ventures、Yコンビネータ、Mucker Capital、Fundersclubからも新たな資金を獲得した。

UpKeepのCEOを務めるチャンは、「暮らしのインフラを支える人々のためのツールを提供していきたい」と話す。同社のアプリは現場の作業員のコミュニケーションに用いられ、浄水場だけでなくエレベータの修理や消火活動、工場などで修理が必要な機器のデータを共有可能にする。

例えば、ビルのメンテナンスの作業員が、補修が必要なエアコンを発見した場合、その機器の写真をスマホで撮影して共有する。すると、その写真を確認したマネージャーが、必要なスキルを持った担当者を現場に派遣するのだ。

「この方法であればデバイスの状態を正確に把握することが可能で、修理プロセスの管理も的確に行える」とチャンは話す。
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編集=上田裕資

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