特製チキンライスとオレンジワイン
外苑前にあるモダンベトナミーズの「An Di(アンディ)」は、予約が取れない人気レストラン。
ワインテイスターでソムリエのオーナー、大越基裕氏が料理に合わせて選ぶ、ワインペアリングのコースも人気の理由のひとつだ。このコロナ禍では、テイクアウトを提供し、自宅でもアンディの世界観が楽しめるようになった。
持ち帰り用に開発された特製のチキンライスは、ターメリックで炊いたライスに、きれいに蒸しあがったチキンと色彩豊かな野菜が目を引く。ソースは、自家製のラー油にレモングラスの風味を加えたもので、一口食べると様々な食材の味わいが口に広がる。
大越氏がこのチキンライスに合わせたワインは、オーストラリアのウニコ・ゼロの「Esoterico(エソテリコ)」。香り豊かなマスカットのブドウをベースに、果皮から成分を抽出した、オレンジワインだ。
お店では、大越氏が選ぶワインをテイクアウトでも購入することができる。
「ワインと料理、両方の香りの調和を大事にしました。特に、ワインのマスカットや柑橘系の香りが、ターメリックやレモングラスといった個性的な要素とも相性がよいのです。そして、オレンジワインには少しの渋みがあるので、ラー油のスパイシーさにも引けを取りません。蒸した鶏肉は、柔らかく軽めの料理なので、温暖なワイン産地から、優しい果実のオーストラリアのワインを選びました」(大越氏)
たしかに、少しスパイシーで酸味があるチキンライスの風味を、オレンジワインが優しく包みこみ、絶妙の組み合わせだった。
他にも、スペシャリテであるティーリーフサラダやベトナム風サンドイッチのバインミーなど、アンディの人気料理もテイクアウトできる。一緒に大越氏セレクションのワインも購入できるので、自宅でもレストランでも、ワインとあわせれば楽しさが倍増すること間違いない。
スペインワインの巨匠が選ぶ旬のワイン
最後に、「お家飲み」が増えているであろう読者の方々に、お勧めのワインショップを紹介したい。東京板橋の「ワイナリー和泉屋」は、インターネット店舗も充実していて、全国に配送可能だ。
ここでは、オーナーの新井治彦氏が目利きし、輸入しているスペインワインが面白い。特に新井氏が勧めるのが、スペイン北西部のワインだ。ここは世界のワイン専門家たちも注目するワイン産地だが、新井氏は、その流行の前から目をつけ、日本で紹介してきた。
「ブルゴーニュワインが好きで長年扱っていたのですが、15年ほど前、高騰する価格や供給に不安を感じ、同じようなニュアンスのワインを探していたときに出会ったのが、今までのイメージを覆すスペインワインでした。綺麗な酸がありエレガントで、すっかり魅了されました」(新井氏)
例えば、新井氏が惚れ込んでいる、天才醸造家と名高い「Raul Perez(ラウル・ペレス)」。ラウルがワイン造りをするビエルソの地は、山岳地帯で、標高の高い急斜面に畑があり、古い樹齢のブドウの木が多く植わっている。
赤ワインは、主にメンシアという固有のブドウ品種で造られ、ラズベリーやチェリーの果実と、フレッシュな酸がバランスよいワインだ。
スペインワインは、リーズナブルな価格で高品質のワインが見つかるのも嬉しいところ。ワイナリー和泉屋のネットショップでは、旬のスペインワインを豊富に扱っているので、そのなかで自分に合うワインを探索するのも楽しいだろう。
この先例のない事態で、飲食業界は大きな打撃を受けている。美味しい料理やワインは生活を豊かにし、人を繋げる。お気に入りのお店やワインをサポートする気持ちもこめて、これからも自宅でも、ワインやレストランの料理をたくさん楽しんでほしい。
島 悠里の「ブドウ一粒に込められた思い~グローバル・ワイン講座」
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