金融リテラシーの世界基準 日本の大学生は高いか、低いか

Carol Yepes/Getty Images

政府による緊急事態宣言が発出されて以降、キャンパスに通えていない大学生は多いことだろう。

4月27日にLINEが運営するLINEリサーチが行った新型コロナウイルス感染拡大による影響調査によると、4月15日時点で「通っている大学が一斉休校」と回答した大学生は全体の約9割にのぼった。しかも「オンライン授業が行われている」と回答したのは46%にとどまった。

このような状況下で、グローバル基準に合わせるべく、学校の始業や入学の時期を9月にずらそうという声があがっている。日本経済新聞は、都道府県知事に「9月入学」の賛否を聞いたところ、約6割が賛意を示したと報じた。

しかし、世界の大多数の国々で採られている「9月入学」は1つの検討事項であり、あくまで新型コロナ禍における手段の1つである。勘違いしてはいけないのは、「9月入学」にしただけで、日本の大学生がグローバル水準で勉学に勤しめるというわけではない。

制度をグローバル水準に整えるのであれば、知識レベルや語学力も引き上げる必要があるし、学習環境や習慣についても改善する必要があるだろう。前出の日本経済新聞の調査結果を見るに、今後は9月入学が導入される可能性も十分に考えられるため、学生も各自がそれに対応すべく自身の知識レベルや学習習慣の改善などで、対応することを考えておいたほうがいいだろう。

ということで、今回は、金融リテラシーという観点から、グローバル水準との比較をしてみたいと思う。

他国に比べて低い日本の金融リテラシー


経済協力開発機構(OECD)が実施する国際学習到達度調査(PISA)という調査のなかに、金融リテラシーに関するものがある。日本でも金融広報中央委員会が「金融リテラシー調査」を実施しているが、OECDの調査と問いが共通しているものが11問ある。

それらの正答率を比較すると、対象となる30の国や地域のなかで、日本はなんと第22位と低い順位にある。まったく同じテストによる比較ではないため、結果をそのまま受け入れるのは問題があるかもしれないが、日本の金融リテラシーがそこまで高くはない、ということは言えるだろう。

この結果を受けて日本の金融リテラシーが低いと騒ぐつもりはなく、何が原因なのかということを確認し、改善の道を探っていきたい。正答率が低かった問題を調べてみると、「インフレ」「複利」「分散投資」という3つの設問が浮かび上がってきた。

日本は、他国に例がないデフレ・低インフレ経済を続けてきた国だから、インフレの概念が弱いのは仕方ないことだろう。筆者は物心がついたころにバブルが崩壊し、デフレマインドを刷り込まれて生きているため、新興国に駐在するまではインフレを体感として理解することができなかった。

また、投資に縁遠い日本人にとって、複利と分散投資を理解する機会も少ないため、これも仕方のないことだろう。国民の資産運用を促すために用意された各種のNISA口座(一般、つみたて、ジュニア)の開設数は全人口で割ると、まだ全体の11%程度なのだ。
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文=森永康平

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