マスクの着用は、意見の分かれる問題だ。あらゆる公共の場での着用が義務付けられている場合もあれば、閉鎖された空間でのみ使用が必要とされたり、特に指示がなかったりする。場所によって、対応が異なる。
筆者が住んでいる地域では、閉鎖された空間ではマスクの着用が推奨されているものの、屋外の密集していないエリアでは、特に指示はない。がん研究に携わる科学者としては、保健当局のこうした対応に賛成だ。
一方、手袋の着用を義務付けるケースがあることには、反対の立場だ。仕事のために10年以上、ほぼ毎日使い捨て手袋を使っているからこそ分かることだが、自分や周囲の人を守るために有効な手袋の使い方をすることは、実際にはそう簡単なことではない。
研究者に手袋が必要な理由は、主に2つある。ひとつは私たちが触るすべての物を、私たち自身、そして私たちが持っている常在菌などの微生物から守ること。もうひとつは、自分自身を守ることだ。毒性化学物質や細菌、ウイルスなど、触る可能性があるすべてのものから身を守るためには、手袋が欠かせない。
研究者たちは、自分と周囲の人たちを守るために最善の手袋の使用と廃棄の方法について、トレーニングを受けている。新型コロナウイルスほど危険なウイルスに接触する機会がない場合でもそうだ。
なぜ手袋が危険?
使い捨て手袋は、私たちが素手を洗うときのように、着用したまま洗うものとして作られていない。名前のとおり、汚れたらすぐに捨て、新しいものと交換する必要がある。ウイルスのような危険なものを扱う場合には、外し方や捨て方、交換のタイミングにも決まりがある。
また、手袋は現在、世界的に不足している。医療従事者や介護施設で働く人たち、ホームレスの支援を行っている人たちなどが、常に必要な量を入手できるわけではなくなっている。