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KDDI 経営戦略本部・ビジネスインキュベーション推進部長 中馬和彦氏

新型コロナウイルスによる外出自粛で、急速にテレワークやリモート業務が広まっている。日本も本格的なオンラインの時代に突入したと言う人も少なくない。

まさに、その時代の幕開けを象徴するかのように、ほぼ同時期の3月下旬、日本でも「5G」がスタートした。5Gとは「第5世代移動通信システム」のことで、これまでの移動通信システムが大幅に進化して、高速・大容量化、多接続、低遅延など、旧来の100倍近い処理速度を持つブロードバンドサービスを指す。

この5Gの登場によって、最も進化するのがスポーツやエンタテインメントの分野だと語るのは、KDDIの経営戦略本部・ビジネスインキュベーション推進部長である中馬和彦氏だ。そればかりか、「5Gは農業など第一次産業も含めて、あらやる分野をアップデートする」とも断言する。

5Gの登場で、世界はまったく別のものになるかもしれない。新たな時代を切り拓く最大のツールである5Gは、どのような未来を私たちにもたらすのだろうか。5Gの最前線を行く中馬氏に聞いた。


──いよいよ日本でも5Gの新時代が始まったなという思いがあります。

5Gの導入によって、「第4次産業革命」が訪れると言われています。蒸気機関が発明されたのが「第1次」、電気が生まれたのが「第2次」、インターネットが普及したのが「第3次」、そして今回の5Gが「第4次」ということになります。多くの人は、これが「産業革命」であるとは感じていないかもしれませんが、それくらいのインパクトが、5Gの導入にはあります。

ただ、これまでの産業革命とは決定的な違いもあります。歴史を振り返れば、繊維産業や機械産業が起こり、その上に乗るかたちでインターネットが生まれました。つまり「足し算」で次の産業が誕生してきました。ところが、5Gによる産業革命は「掛け算」になります。新しいインダストリーは、第3次のインターネットに乗って出てくるわけではないのです。それほど、世界はガラリと変わります。

──具体的な事例で教えてもらえますか。

例えば、機械産業においては、5Gがインダストリーテックでさまざまなところへ入っていき、ものづくりそのものがアップデートしていきます。つまりIoTやAIの技術が入ることで、オートメーション化が格段に進み、サプライチェーンが激変していくのです。

第1次産業である農業や水産業でも、「無人農地」や「遠隔漁業」など、いままでにはなかった取り組みが起こります。なので、第4次産業革命で第1次産業がなくなるのではなく、逆にアップデートされていくのです。

もしかしたら、農地そのものが「工場」になるかもしれない。生産性の観点から特定の農地にカメラなどを張り巡らすと、見える化できる。人が現地に行かずとも、ロボットなどに指示して耕運機を動かせるようになる。基本的には省人化・擬人化の農法がとれるのです。

また、よく農産物が収穫され過ぎて市場価格が下がるなどの現象が起こるけれど、完全に農業が機械化された場合、工場と同じように、生産がサプライチェーンのなかに取り込めると考えられます。つまり、サプライサイドの必要な分だけ、オンデマンドで生産することが可能となってきます。農業ですら、5Gでこれだけ激変の可能性があります。

インターネットにしても、XR(Cross Reality、AR=拡張現実やVR=仮想現実などの技術の総称)が入ってくるので、いままで2Dの平面だったものが、3Dの奥行きのある世界に変わり、バーチャルの空間が実現します。しかも5Gによって、極限までリアルなバーチャル空間がつくられる。そうなると「バーチャルのリアル化」のような現象が起こり始めます。

文=上野直彦 写真=Noriko NAGANO

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