「意思決定できない組織は淘汰へ」3億円集めたコロナ基金の舞台裏

小坂健・東北大学教授(左)と米良はるか・READYFOR CEO(右)


なぜ幅広い支援が必要なのか


では、新しい社会を後押しするために、どのような支援ができるのだろうか。同基金で、もう一つ特徴的だったのが幅広い支援先だ。反対に、大阪府をはじめとする自治体などが主体となり、地域の医療従事者を支援する「新型コロナウイルス助け合い基金」など、目的を絞った基金も数多く設立されている。

小坂教授は「必ずしも特定地域の医療機関だけに配るのではなく、もっと幅広く配りたいというニーズもある」と指摘する。発起人の有志の会には、感染症や公衆衛生の専門家だけでなくIT関係や、介護、在宅医療や災害支援など幅広い分野の専門家が参加。助成先には医療機関への緊急支援だけでなく、影響を受ける様々な分野や、将来の「種まき」としての事業も対象に含まれた。



選考に立ち会った、在宅医療が専門の佐々木淳医師(『GW、離れて暮らす高齢の家族のためにできること』『「患者満足度」最下位の日本で「臨終」に希望を見た男』など参照)は「誰がお金を出すのかわからないが、誰かがやらないといけないという仕事に資金を提供することができるという点で、この基金はとても貴重だ」と話す。

例えば、第1期で選ばれた日本救急医学会新型コロナウイルス対応タスクフォースによる活動。N95マスクなどこれまで海外からの輸入に頼っていた医療資材について、需要の減少で工場に余力のある中小製造業者と協力し、開発に取り組む。緊急支援の対象にはなりにくいが、長期的な視点での意義は大きい。

寄付先の内訳(HPより)

第1期では、医療機関や福祉施設、育児施設へマスクを配布する団体などが重点的に選ばれた。第2期では、より裾野を広げて医療機関や緊急対応をしている「支援者の支援」、社会的マイノリティや教育支援などを行う16団体に計7343万3356円が助成された。

新型コロナウイルス危機では、今までになかったさまざまな社会課題が起きている。佐々木医師は、医療現場に資材を安定供給するサポートは引き続き必要だとしながらも、さまざまな課題に新しいアプローチで挑戦する人をみんなで支援することも大切だと指摘する。

週単位で刻一刻と状況が大きく変わってしまう新型コロナ対応。緊急事態宣言が39県で解除され、必要とされる支援の形も多様化が求められる中、小坂教授も新しいチャレンジが重要だと考えている。

「医療機関だけでなく、甚大な影響を受けた飲食業やホテル業など業種を組み合わせて支援するなど、幅広くイノベーティブなアイデアがあるといい。そのようなアイデアこそ、日本の希望になるのではないか」(小坂)。

次の助成は6月11日ごろに決定、募金は7月2日までレディーフォーのサイトで募集する。

構成=成相通子

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