「意思決定できない組織は淘汰へ」3億円集めたコロナ基金の舞台裏

小坂健・東北大学教授(左)と米良はるか・READYFOR CEO(右)


コロナで露呈した組織の意思決定力


慈善行為への寄付を募るクラウドファンディングでは、営利企業であるプラットフォームが取る手数料の問題になることもある。通常、レディーフォーでは、決済手数料5%以外に7-12%をサービス料として受け取っているが、今回はそのサービス料をとっていない。

レディーフォーは運営事務局として書類の一次審査や事務局運営にもあたるが、利益がほとんどない業務になる。トップとしてどう決断したのか。

「社会貢献をしようとしたわけではありません。レディーフォーの役割は、『必要なところにお金を届ける』こと。その役割を純粋に考えてこのような形にしました」(米良)

同社では、米良氏だけでなく社員の一人ひとりが「社会にどうやって価値を還元できるのか」を常に考え、それが会社のカルチャーとして定着しているという。だからこそ新型コロナのような緊急時にも「社会のためにすべきこととして素早く意思決定ができた」と米良氏は説明する。

「社会貢献をしよう、と言っても社会にはなかなか広がりません。日頃から自分たちの会社が社会の中での役割を考え、会社のミッションやビジョンがきちんと定まっていれば、何をすべきかがすぐにわかる。今回の危機が多くの組織にとって、社会での役割を考え直す機会になってほしいですね」(米良)。

過去に厚労省の医系技官やWHOコンサルタントも務め、大学でのベンチャービジネスとの連携、東日本大震災で地方自治体やNPO、企業など様々な組織との協働を経験した小坂教授も、「国が全部を決めてやるというシステムはもう機能しない」と話す。

「とりたてて社会貢献と言わなくても、みんながやる時代。それぞれの組織の意思決定のあり方が重要だ。大企業でもすぐ意思決定できる会社もあったし、都道府県単位で素晴らしい対応をしている自治体もあるが、一部の企業や役所、大学など変わろうとしない古い体質が残っている。そういった組織は以前から終わりが見えていたが、新型コロナウイルスの影響で目に見えてそれが進んだ」(小坂)

それは必ずしも暗い話ではない。期待を込めて小坂教授はこう語る。「古い体制が自然淘汰されて、新しい社会になれば逆に面白くなってくるかもしれない」。
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構成=成相通子

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