「意思決定できない組織は淘汰へ」3億円集めたコロナ基金の舞台裏

小坂健・東北大学教授(左)と米良はるか・READYFOR CEO(右)


私の1000円はどこに…?


「『毎月、ここに支援することに決めた』『1期の助成報告で信頼できたので、2回目も寄付します』といったSNSでの報告もありました。こういうリピート支援は非常に嬉しいですね」(米良)

リピートしたくなるほどの「信頼感」はどう築いたのか。助成団体は、受け取りが決まった時、中間報告、そして活動終了の3回以上にわたって報告が必要で、それらの報告は動画を交えてウェブサイトやSNS上にタイムリーにアップされる。こうして寄付金の使い道ができる限りわかるようにした。

「災害時などの緊急支援の寄付は、お金の流れが分かりにくいと言われています。東日本大震災でも『なけなしの1000円を寄付したけどどう使われたのかわからない』という声を聞きました。自分が出したお金がどう使われるのかは当然知りたいし、これを解決できればリピーターにつながると思っていました」(米良)

さらに、集まった寄付の助成先は、今回の発起人の専門家らが諮問する仕組みにした。公益財団法人東京コミュニティー財団からの委託を受けたレディーフォーが4月3日から7月2日まで寄付を募集(寄付控除の対象)。助成を受けたい団体や個人がオンラインで送った申請書をもとに、運営事務局と専門家が審査・諮問を実施して助成先を決定し、東京コミュニティー財団の承認を経て、お金が振り込まれる。

海外のクラウドファンディングでは虚偽の登録による詐欺などが報告されているが、このように専門家や公益財団法人が選考に関わることで、実現性や緊急性をきちんと審査し、透明性や説明責任の確保に努めた。

第1期では10団体に計4629万7200円が振り込まれた。もちろん、政府が計上する感染防止対策の費用1.8兆円、給付金や資金繰りの支援約19.5兆円といった大型予算とは比較にならないが、応募開始から助成決定まで10日間という早さは民間ならではだ。

「国が都道府県を通じて配るお金とは違うスピード感で、現場にすぐ届いたという実感がある。寄付してくれたのは裕福な人だけではない。お金を節約して、自分ができる範囲で何かしたいという思いの人がいっぱいいて、その受け皿になれたのではないか」と小坂教授は振り返る。
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構成=成相通子

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