また、男性よりも女性のほうが悪影響を受けているようだ。KFFの最新調査では、コロナ関連の不安やストレスが精神衛生に悪影響を与えていると答えた女性の割合は、男性よりも16ポイント多かった(女性53%に対して、男性は37%)。それに対して2週間前の調査では、男女差は9ポイントにとどまっていた(女性36%に対して男性27%)。
18歳未満の子どもをもつ親では、その差はさらに鮮明になる。3月末の調査では、パンデミックによって精神状態が悪化していると回答した人は、母親が57%だったのに対して、父親では32%だった。その2週間前の調査では、男女差はわずか5ポイントだった(母親36%に対して父親31%)。この数字は、時間が経つにつれて、負担の大部分が母親に偏る傾向がある可能性を示唆している。
さらに気がかりなのは、パンデミックの心理的な影響が、今後の数週間や数か月、場合によってはさらに長期にわたって増大する可能性があることだ。
トロント大学の精神医学・薬理学教授で、気分障害精神薬理ユニット長のロジャー・マッキンタイアは、「残念ながら、当院のメンタルヘルス治療センターへの問い合わせや紹介が増えている」と語る。
「時間が経つにつれて、経済的な不安定に関連した、あるいは、孤立の副作用として生じる不安や抑鬱の深刻さが増している。そのため、今後も患者数は増えつづけると予想している。我々がいま目にしているのは、孤独とストレスという爆発しやすい組み合わせが、新型コロナウイルスの影響により増幅されている状況だ」
マッキンタイアはさらに、時とともに「家に閉じこもる苦しみ」が増し、過去にも例があったように、自殺率が上昇する可能性もあると指摘している。
「最大の懸念要因は、過去2週間で推定1000万人の米国人が失業保険の受給を申請したことだ。失業率が1%上昇するごとに、通常は自殺率も1%上昇する」と、過去の経済危機の際の統計を引き合いに出しながらマッキンタイアは述べる。「ロックダウンにより、とりわけ失業者や感受性の強い若者において、孤独感や抑鬱が悪化するおそれがある」
パンデミックによって身体的な健康に影響があるのは明らかであるし、多くの側面が危機にさらされることはまちがいない。だが、精神衛生への影響を無視したり過小評価したりするべきではない。多くの専門家は、その点を重視した政策の必要性を訴えている。
社会活動の再開が検討され始めているいま(できるかぎり早い再開が望ましいが、データにもとづき、状況を詳細に把握したうえで再開するべきでもある)、身体の健康とともに、精神衛生面についても考えることがきわめて重要だ。