新型コロナ禍で選手のメンタルに影 日本サッカー界でいま起きていること 


コロナ禍による試合の中断を不安に感じる選手がいる一方で、シーズン中に3カ月近くも試合から遠ざかるというこれまでにない経験を、逆に歓迎する選手もいる。

「自分を含めて、変化が早いサッカー界についていくのが精いっぱいだった選手がほとんどだと思っています。そのサッカーを取り上げられ、なおかつ心身が健康な状態で自分自身と向き合う、貴重な時間を得られたと、個人的には受け止めています」

こう語るのはサガン鳥栖のキャプテンを務める34歳の小林祐三だ。柏レイソルから横浜F・マリノスをへて、2017シーズンからサガンの右サイドバックを担ってきたベテランを含めて、サガンの選手たちは特別に招聘された講師のもとで、サッカーができない状況下における目標設定方法や心の持ち方をテーマにしたメンタルトレーニングを受けてきた。小林が続ける。

「自分にとってサッカーとは何なのか、自分はサッカーを通じて何を表現したいのか、誰に何を届けたいのかなど、中断期間に自問自答したことを大事にしながらチームのみんなでボールを蹴ったときに、これまでとはまったく違う風景が見えると想像しているので」

小林の言葉からは、サガンの選手たちが受けたメンタルトレーニングが、少なくともこの状況を前向きに進んでいく力になっていることを感じさせる。5月14日に39県で緊急事態宣言が解除され、サガンを含めた複数のクラブが練習を再開させた。

FIFProは、先のアンケート結果をうけて、「特に若い選手たちの間で、将来に対する不安や疑問が生じている」と指摘していた。こうしたヨーロッパ発の警鐘を、対岸の火事としてではなく、日本のサッカー界も深刻に受け止めることが必要だろう。率先して心を奮い立たせている柏木や小林らのベテラン勢の背中は、若手を鼓舞する光になるかもしれない。選手も運営も一丸となって、懸命にこの未曾有のコロナ禍を乗り越えた先を目指していく。

連載:THE TRUTH
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文=藤江直人

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