ディズニーの動画ストリーミング部門を率いてきたケビン・メイヤーは今後、TikTokの運営元の中国企業「バイトダンス」のCOOも兼任することになる。
メイヤーは以前、ボブ・アイガーの後を継ぎ、ディズニーのトップに就任するものと見られていたが、その役割は今年2月にCEOに就任したボブ・チャペックの手に委ねられることになった。
チャペックは以前の声明でメイヤーについて「彼は長年、ディズニーにおいて非常に重要な役割を果たしてきた人物であり、シニアマネージメント部門の同僚として心から感謝している」と述べていた。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ディズニーは経営の屋台骨を支えるパークやクルーズ船事業を休止させた。同社の会長に退いたアイガーは、危機に対処するため業務に復帰し、3月には60億ドル(約6400億円)を外部からローンで調達した。ディズニーは社員らに一時帰休を命じ、CEOのチャペックは年俸を半分にすることに応じ、会長のアイガーは1年間の報酬をゼロにした。
TikTokに移籍するメイヤーは、これまでとは全く異なる任務を引き受けることになる。
パンデミックを受けてTikTokはさらに支持を高めており、調査企業SensorTowerによると今年第1四半期のダウンロード数は3億1500万件を突破した。これは四半期あたりの数字として過去最大という。
メイヤーはディズニーで長年、買収交渉を手がけ、ピクサーやマーベル、ルーカスフィルム、21世紀フォックス(FOX)との交渉を率いてきた。さらに、ディズニーが昨年立ち上げた動画ストリーミングのDisney+にも深く関わった。
Disney+のダウンロード数は2019年に1410万件を突破し、ネットフリックス(1190万件)やHulu(810万件)を上回った。ディズニーはDisney+に、初年度に10億ドルの予算を投じ、オリジナルコンテンツを用意すると宣言しており、既に「スター・ウォーズ」シリーズ初の実写ドラマ「マンダロリアン」を配信した。また、ブロードウェーミュージカル「ハミルトン」の映画版を間もなく公開する。
メイヤーは今後、TikTokにおいていくつかの課題に直面する。中国企業が運営するTikTokに対し、米国政府は監視の目を強めている。先日は20の市民団体が、同社が米連邦取引委員会(FTC)の命令に背き、有害な動画を子供たちに閲覧可能な状態で放置しているとして抗議した。
メイヤーはCEOの任務を、Alex Zhuから引き継ぐことになる。Zhuは2017年にバイトダンスが買収した中国のアプリMusic.lyの創業者の一人だ。メイヤーが最初に手掛ける仕事は米国人を説得し、TikTokが脅威ではないことを理解させることになる。