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2020.06.06 18:00

「マイノリティ言語が母国語」は強い ハリウッドで学んだコミュニケーション術

翻訳出版プロデューサー 近谷浩二


「ハリソン・フォード主演の日本のメーカー向けのCM撮影にエキストラで出演したこともあります。ハリソン・フォードは無口で孤独を愛する俳優で、田舎で農場暮らしをしていました。人が多い街が苦手な彼のために、LAのスタジオに設営した日本の街の大掛かりなCM用セットで、中山美穂さんや伊東四朗さん、唐沢寿明さんなどとの撮影に参加しました」
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「STAR SAND -星砂物語-」のロジャー・パルバース監督は、「俳優としての近谷浩二」について次のように語る。

「近谷は信じがたいほどの感情の深さを身内に有する俳優です。『STAR SAND -星砂物語-』で彼に出演してもらったのは、物語がここをきっかけにトーンを一新し、よりサスペンスの色合いを強める重要なシーンだったからでした。この『舞台回し』は、彼の演技力と存在感がなければ成功しなかった。実際、観客はこのシーン以降、一気に作品世界に没入していけるはずです」(訳:編集部)


「STAR SAND -星砂物語-」より。主人公洋海(ひろみ)との短くも非常に重要なシーンで「憲兵」役を好演した。(c)2017 The STAR SAND Team
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東洋系演劇集団で「多国籍英語」にまみれる


近谷は、ハリウッドでは「スクリーン・アクターズ・ギルド」に加盟するほか、俳優エージェントとも契約した。オーディションを受けたりするかたわらで所属し、活動していたのは、俳優のジョン・ローンらを輩出した「イースト・ウエスト・プレイヤーズ」だった。ハリウッドの殿堂「ハリウッド・ウォーク・オブ・フェーム」にも名前が刻まれている日系人俳優・マコ岩松が設立した、全米最大の東洋系演劇集団である。

ここで学んだことは、近谷にとって大きな転機になった。
 
「言葉の面では、英語がほとんどできない状態で渡米したので、とにかく大変でした。英語ができないと対等に扱ってもらえないのではという恐怖もありましたしね。でも『イースト・ウェスト・プレイヤーズ』で、マレーシアやフィリピン、あるいは韓国にルーツをもつ人たちがいろんな言語背景を持ちながら『それぞれの英語』を操っているのを目の当たりにして、自分の恐怖心に小さな疑問が芽生えました」


ハリウッドで。キャスティングディレクター、共演者と

この劇団では、皆の前で短いモノローグ(1人芝居)を演じたり、女優と組んで戯曲のワンシーンを再現したりして、皆で批評し合う訓練をしていた。そして、徹底的にダメ出しを食らう日々の中、ある日、彼の演じたシーンが拍手喝采を受ける。


スクリーン・アクターズ・ギルド(入会には、「セリフありの演技が全米に放映されたことがある」などの条件があった)のバッジと、UCLAのエクステンションコースで学びながらアルバイトをしていた時のバイト証。ニューロサイキアトリックインスティテュート(脳神経科学)の研究機関で、ビーカーを磨いたりするアルバイトだった。

「その時ですね、英語は誰のものでもない、それぞれの人にとっての道具だから、むしろ『使い癖』があってあたり前なんだ、と本当に気づいたのは」

英語のことに限らず、「イースト・ウエスト・プレイヤーズ」では、こんなふうに思ってもみないことが前触れもなく起きることがあった。近谷は、ここで、「真剣に表現しようとする人がいる現場は、奇跡を起こすエネルギーをはらんでいる」ことを実感したという。


ハリウッド時代、ピザのCMに出演した時のもの
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文・構成=石井節子 写真=帆足宗洋

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