ビジネス

2020.06.06

「マイノリティ言語が母国語」は強い ハリウッドで学んだコミュニケーション術

翻訳出版プロデューサー 近谷浩二


近谷は「われわれ自身、『源氏物語を生んだ国、日本』はどういう場所なのかを自分たちで理解し、その意味を自分の物語として、財産にして行くべき」とも語る。

「自分の生まれた国のバックグラウンドを、自分自身の出自、アイデンティティとして整理できた時にこそ、『こういう未来が創りたい』という計画や夢を世界に向けてプレゼンできるのではないでしょうか。そしてすでにお話しした通り、そのアイデンティティはビジネスでも生かさない手はない。



「なぜこういう未来を、いま関わっているビジネス分野で創りたいのか」の理由を、「自分が何者か」を明らかにしたうえで、自分の言葉と『声(ボイス)』でビジネスパートナーとシェアできれば、発言の文脈はより明瞭になり、説得力を持ち、伝わる力を備えるからだ。

「母語がメインストリームでない」ことが強みになる時代


「日本では長い間、社会の中で『個』が表現しようとする時、集団の美学や同調圧力によってそのヴォイスが消されがちだったと思います。しかしこれからは個人のボイスやアイデンティティや背景、そしてそこに端を発する『目標』や『夢』が、組織のそれらを超えて行く時代です。

デジタル革命も手伝って表現の方法が変わり、社会的な枠が壊われてきた今は、日本人のボイスもおそらく、世界の中で大きく響いていく。この先10年で20年で状況はかなり変わるのではないでしょうか。もちろん文学やアートの世界だけではなく、『道』に通じたい、極めたいという日本人のマニアックさは、ビジネス交渉のシーンやネットワーキングでも花開いて行くと思います」

近谷は、日本人と「英語」との関わり方についても意外なことを話してくれた。

「日本語で考えることができる私たちは、実はラッキーなんですよ。母語として話す言語がメインストリームでないことは、逆に強みになるんです。メインストリームではない独自の文化背景をもとに、ユニークな視点を持ち得るんです。

グーグル翻訳や通訳アプリの性能が今後どんどんよくなれば、「英語が堪能」であることのバリューはそれほど高くなくなる。だから、世界言語という『ツール』を使いこなす技術よりも、そのツールを使って表現したい『自分の興味』を自分で知ること、そして、繰り返しになりますが、『自分が何者か』を相手に伝えることができる表現能力が、より重要になってくるはずです」

文・構成=石井節子 写真=帆足宗洋

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