ビジネス

2020.06.06

「マイノリティ言語が母国語」は強い ハリウッドで学んだコミュニケーション術

翻訳出版プロデューサー 近谷浩二


日本人の「マニアックさ」は世界のビジネスシーンでも花ひらく


「ぶっとんだ、クレージーな、あり得ない発想をする」日本のクリエイターが海外で表現する機会があれば、予定調和では語れない化学反応が起きるに違いない、であればそんな「何が起きるかわからない」現場を創出したい。そう感じた時、彼がその現場として選んだのが「文学」だった。



「とくに田口ランディさんとは、もう長く海外の文化イベントなどにご一緒させていただいています。また2015年には中村文則さん、2016年には綿矢りささんをシンガポールの作家フェスティバルにエスコートしました」

出版プロデュースの仕事と演技に、共通点はあるのだろうか。

実は演技で重要なのが「聞いている」パフォーマンス、と近谷は言う。しゃべる演技はセリフさえ覚えればできるが、本当の演技は、相手が伝えようとすることを「受け止めること」だ。そして、相手の表現を受け止めて返し、コミュニケーションを成立させるためにはむろん、相手への興味が必須である。表現者である作家の言葉を、とびきりの興味と愛情を持っていったん受け止め、それを海外にコミュニケートする出版プロデュースの仕事。どうやら、演技と似ているところがありそうだ。

そして彼は、いまや日本の文学界を代表する女性作家である角田光代とも仕事をする。角田は、今年2月、『源氏物語』(河出書房新社刊)全3巻の、5年かけての上梓を完了した。まさに古典中の古典の「新訳」である。

近谷と角田は、「国際交流基金ヤンゴン日本文化センター」の協力を得て、この日本が誇る壮大なサーガをミャンマーの人たちに直接伝える文化交流イベントを計画している。なおミャンマーの超有名閨秀作家、マ・ティダ氏が編んでいる文芸誌には、角田作品がミャンマー語で収録されている。
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文・構成=石井節子 写真=帆足宗洋

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