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2020.05.19

新型コロナの情報を多言語で発信 「#日本から国境をなくす」プロジェクトが始動

one visa代表取締役の岡村アルベルト

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、政府からは金銭面でのサポートを含む100以上の支援策が発表されている。その多くは支援対象を広く設けている一方、難解な日本語による発信が大半を占めており、外国籍の住民が情報を受け取れずに困っている声を多々、耳にする。

日本に住む在留外国人数は282万人(19年6月時点)。中でも仕事をしているのは165万人と、日本の労働人口の約50人に1人が外国籍であり、日本社会を支えているということになる。これだけ多くの人が課題に直面しているにも関わらず、多言語による情報発信や彼らがまとまった情報を受け取る場がないという課題があった。

そこで、オンラインによるビザ申請・管理支援サービスを提供するone visaとWebサイト多言語化ソリューションを提供するWovn Technologiesは、新型コロナウイルス感染症による補償として政府より発表されている情報をわかりやすい言葉でまとめて、多言語に翻訳し、発信する「#日本から国境をなくす」プロジェクトを立ち上げた。

日本国内に「目には映らない国境」がある


「#日本から国境をなくす」プロジェクトは、特設サイトにて緊急度の高い生活インフラに根付いた内容から、英語・中国語・韓国語・やさしい日本語の発信を行う取り組み。

具体的には、まずは外国人専門大手人材会社であるグローバルパワーに登録している4.3万人の外国籍人材や、ジャパンショッピングツーリズム協会より、JALやセブン&アイホールディングスをはじめとした外国籍人材も雇用する会員企業150社に向けて情報を届ける。

また在留外国人がよく参照しているコミュニティサイトや、「#日本から国境をなくす」をつけたSNSへの投稿を通じて情報を拡散させていくとのこと。賛同企業に関しては引き続き募っていくそうで、one visaによれば「外国籍の従業員や知人の外国籍の方に対し情報提供してくれる仲間を募集していく」という。

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今回のプロジェクトの立ち上げについて、one visa代表取締役の岡村アルベルトはこう思いを口にする。

「『外国人と、日本人』の違いはなにを表すのでしょうか。 同じ国に住んでいる仲間なのに、人は不思議なもので、ひとつ線を引くだけで、国境が生まれ戦争が起きる。見る目が変わり、偏見が生まれる。男女、言語、文化、目には映らないボーダーによって、私たちの生活はいつの間にか区切られています。いま、日本に住んでいながら、日本が発表するコロナウイルスの支援情報が届いていない人たちがいます。

自らが引いてしまった一線はすぐに飛び越えられるけど、 誰かに引かれてしまった一線はなかなか飛び越えられない。だからこそ、多言語で必要な人に情報を届けるこのサイトが生まれました。『思い』だけではなく、私たちは『情報』から、 #日本から国境をなくす ことに挑戦したいと思ったんです」(岡村)

岡村は東京の入国管理局にて窓口業務を勤めていた経歴があり、年間2万件のビザ申請の現場を見てきた。ビザ申請に関する書類は複雑を極め、窓口は外国籍の人々で常に混雑している。受付から申請完了まで4〜5時間の待ち時間もざらにあるという。これらの根元にある課題を、なんとかITで効率化しようと立ち上げたのが「one visa」だ。
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編集=新國翔大

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