ビジネス

2020.05.18

「コロナショック」を生き抜く足固めに。HRテックのROXXが総額9億円を調達

ROXX代表取締役の中嶋汰朗


入り口の敷居を下げて、いかに使ってもらえるか


リリースから倍々ゲームで成長を遂げてきたagent bankだが、新型コロナウイルスの影響は長期化が予想されており、今後の戦略も練り直さなければならない。

「2008年に起きたリーマンショックのときは2009年、2010年に採用市場が落ち込んでいるんですよね。一旦、産業がダメージを受けると、採用する余力は簡単に戻ってこない可能性もあると思っていますし、すぐには回復しないと見ています。これまでは広告、マーケ予算を使ってサービスを広めていましたが、これからはいかにキャンペーンなどで入り口の敷居を下げるか。一時的に売上を伸ばしづらいフェーズになると思いますが、そこは仕方ない」

実際、ROXXは4月から新たにサービス利用開始の人材紹介会社を対象に、毎月100社限定で最大3カ月間にわたって無料かつ成果報酬100%還元で求人データベースを提供するキャンペーンも開始している。



「これまでは創業支援の形でagent bankを使っていただくケースが多かったのですが、直近はagent bankを使わなくても十分に利益が出ていた人材紹介会社からの問い合わせが増えています。キャンペーンを開始してから、2週間で約200社からの応募があったのは驚きましたね。想定の4倍です。もちろん、残念ながら解約になってしまったお客様もいますが、改めて私たちのサービスは必要とされているのだな、と感じました。

どの経営者も固定費を増やす意思決定には慎重になるタイミングだと思うので、今回調達した資金をもとに一時的に売上が棄損してもサービスの提供は止めず、改善アップデートにつなげていく。今までは、使ってもらって増やす形でしたが、これからは試してもらって有料化につなげる形が増えていくのではないか、と思っています」

リファレンスチェックは「追い風」の状態


一方、新型コロナウイルスの感染拡大によって、月額制のリファレンスチェックサービス「back check」は追い風を受けている。back checkは面接や書類からだけでは見えにくい採用候補者の経歴や実績に関する情報を、候補者の上司や同僚といった一緒に働いた経験のある第三者から取得できるサービス。採用予定の職種・ポジションに合わせて数十問の質問を自動生成し、オンライン上でリファレンスチェックを実施できる。

対面での面接ができず、オンラインでの面接を余儀なくされたいま、候補者の経歴や実績に関する情報を知る手段として、リファレンスチェックの重要性が高まっている。実際、独立系VCのANRIもオンライン完結型投資を進めるにあたって、一定レベルの意思決定材料を得るためにback checkを導入している。



「直接会わず、候補者の空気感など非言語的な要素を掴みきれないまま採用するのはカルチャーフィットの見極めも含めて懸念につながる部分があるので、リファレンスチェックをオンライン面接と組み合わせながら、多角的に候補者の評価を取得して採用につなげていくスタイルが新たなスタンダードの一つになりつつある気がします。2019年10月の正式リリースから約4カ月で導入企業数は累計300社を突破しましたし、リファレンス回答数は3000件以上です。1件あたり2〜3人が回答してくれているので、6000〜7000人が推薦を書いてくれている。それなりに“リファレンスチェック”という考え方が浸透してきたのかな、と思います」
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文=新國翔大 写真=小田駿一

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