実際、厚生労働省が発表した3月の有効求人倍率(季節調整値)は1.39倍で前月から0.06ポイントダウン。これは2016年9月以来、3年半ぶりの低い水準だという。
人材業界も今後の見通しは悪いことが予想される中、前回の発表からわずか3カ月でROXXが新たな資金調達の実施を発表した。
人材紹介会社向け求人流通プラットフォーム「agent bank」、月額制のリファレンスチェックサービス「back check」を手がけるROXXは5月18日、グローバル・ブレイン、日本郵政キャピタルを引受先として、総額9億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回の資金調達は、2020年2月に発表したサイバーエージェント、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、三菱UFJキャピタルからの総額5億円の調達に続く、シリーズBラウンドに当たり、同社の累積調達額は約20億円となった。
ROXXは調達した資金を、引き続き「agent bank」と「back check」の両事業への投資、採用強化に充てる、という。また、同社はこの発表に合わせて、1回1000円でリファレンス取得ができる「back checkお試しキャンペーン」も開始する。
掲載求人数は3割減。生きた心地がしなかった……。
緊急事態宣言の発令から、1カ月弱。これまで「超売り手市場」だった求人市場は、新型コロナウイルスの感染拡大によって一変。多くの企業が自社の採用活動を見直し始め、採用をストップ、もしくは採用に慎重になっている。
2018年5月に正式リリースされた、agent bankは月額利用料のみで、サービス上に掲載されている約2000件の求人に対して転職者を掲載企業に紹介することが可能。また求人企業は完全成功報酬型で募集求人を何件でも無料で掲載できる。
こうしたハードルの低さから、累計400社の人材紹介会社が利用。リリースから約2年で単月でagent bankを通じた人材紹介数は月次で120%増加、単月の紹介数は約10000件規模に到達するなど右肩上がりで成長を続けてきた。
ただ、新型コロナウイルスの影響によって、ここ1カ月は成長が鈍化。事業は大幅なダメージを受けているという。ROXX代表取締役の中嶋汰朗はこう振り返る。
「緊急事態宣言が発令されてから、この1カ月間でagent bankに掲載されている求人数は3分の1も減って。正直、生きてる心地がしなかったですね……」
新型コロナウイルスの世界的な流行は誰にも予期できない事態だが、中嶋によれば、ある投資家のアドバイスによって、不況に対する備えを進めていたという。
「株主でもある、ANRIの佐俣アンリさんから『2020年、人材業界は厳しくなると思うから、苦しくなることを見据えて準備しておいた方がいい』とずっと言われていて。そのアドバイスもあったので、前回の調達が終わって、すぐ次の調達準備に取り掛かりました。結果的にグローバル・ブレインさん、日本郵政キャピタルグローバルさんに出資を決めてもらって、3年以上のランウェイを確保できたのは良かったですね」