コロナ後の国や自治体にこそ「ビジョニング」が必要
東京から先進的な活動を仕掛けながら、様々な社会課題と向き合ってきた高木さん。「コロナ以降の世界では、集団としてのビジョニングがより重要になる」と話す理由とは?
「これまでは企業も行政も、新しい未来に挑戦しやすいのはどうしても“都会”でした。しかしオンライン社会が進めば、都会と地方の様々な差が縮まる。全体のITリテラシーが向上することで、今後は地域を問わずイノベーションが生活者に歓迎される世の中になると予想しています」
「3.11でLINEなどのメッセンジャーアプリが広がったように、コロナではZoomなどのビデオ通話アプリが広がっています。顔が見えるビデオ通話は、テキストに比べて直感的でその人の存在を感じやすいコミュニケーションであるため、人々から『ネットとリアル』という言葉がなくなり始めると思っています。作業や会議など多くのコミュニケーションがオンラインで済むとなったとき、コロナが収束してもわざわざオフラインを強制するのは難しい。
すると、これまで同じオフィス、同じ屋根の下で長時間過ごしたことで発生していたような団結力は生まれづらくなる。コミュニティが求心力を持続する上でより大切になるのは、ビジョンや価値観、思想などによる精神的なつながりです。それが弱い組織はメンバーの所属意識が薄れ、結束しなくなっていくでしょう。
これは企業に限らず、国や市区町村でも同じことが言えます。生活のオンライン化が進み外出・触れ合いの機会が減った時、人々は『XX区、OO市に住んでいる』という所属意識を持ちづらくなる。これまでの行事や掲示板のようなフィジカルなものだけではなく、オンラインでも共有可能なビジョンやアクションを持てるかどうかが、コミュニティとしての繁栄と衰退の分かれ目になると想像しています」
中古車事業「ガリバー」は緊急事態宣言発令直後に、医療従事者をはじめとした“移動を必要とする”全国1万名にクルマを無償提供した。企画とクリエイティブをニューピースが担当。「今後は日本企業もソーシャルイシューへの取り組みが活発になる。政治が手の届いていない人々へのサポートを企業が補うようなケースも増えてくるはず」と高木さんは語る。