1つ目の問題は、安倍政権の7年余りに及ぶ「ウィメノミクス」政策によって、日本の男女格差は縮小していると思っていた人には、驚きかもしれない。安倍は確かに「女性が輝く日本」をつくると大々的に語ってきたし、そこでは、少なくとも当初は、企業に女性の管理職や役員を増やすよう促し、男女間の賃金格差を縮小することが目標とされていた。
だが、実際に安倍がやったことは、政治的なスピン(情報操作)のために女性を輝かしい対象に祭りあげることだった。彼のチームは相変わらず男女格差是正に関するどんな会合にも姿を見せるが、残念ながらこうしたイベントの主催者は、日本の女性のためにほとんど何もやらない政府のお先棒を担いでいるだけにしか見えない。
どれほど無為無策か。安倍政権のもと、日本は世界経済フォーラムによる男女格差の国別ランキングで、2012年の101位から現在の121位へと順位を20位も落としている。2020年の日本の順位がアラブ首長国連邦やベナン、東ティモールよりも下というのは、たぶん安倍政権の支持者も予想していなかっただろう。日本は女性の政治参加の面でも後退していて、国会議員の女性比率は164位とサウジアラビア(105位)にすら後れをとっている。
さらに問題なのは、チーム安倍が女性政策での「成果」と誇る内容にも、見かけ倒しのものがあることだ。良い例が、女性の就業率が着実に向上してきたというものだろう。確かに、その数字は今年1月に71%と、ここ10年で最高の水準を記録しているのだが、じつはその一方で「非正規」雇用で働く女性の割合も上昇しているのだ。
こうしたパートタイムの仕事で働く人は、ほぼ3分の2が女性だ。「正規」雇用の労働者に比べると、非正規は賃金が低く、諸手当も少なく、雇用保障は手薄い。こうした雇用の非正規化は企業側には人件費を抑えられるメリットがあり、いざというとき──まさに今のような時期──には人員削減もやりやすい。女性は特にその対象にされがちだ。
あまり取りあげられていない話をもうひとつすると、日本では女性の貧困率、とりわけシングルマザーの貧困率が上がっている。日本全国で多くの女性が夜にホステスとして働いている背景にも、これが関係している。また、日本の終身雇用制度がほころびるにつれて、最も切られやすい仕事の大半を担っている女性は、ますます不安定な立場に置かれるようになっている。