世界でドローン・レースは次なる発展期に突入。日本は規制の壁を越えられるか

日本で3月末に無観客で初開催された「スーパー・ドローン・チャンピオンシップ」


欧米の「レース文化」の違いがドローンの世界でも垣間見られる点は、スポーツ・ビジネスの観点から非常に興味深い。カーレースの分野では、プライベート・チームが競技団体、主催団体のレギュレーションに沿い、独自のマシンを持ち込むことで成長していったヨーロッパ発祥のF1を思わせるDCL対し、メーカーで製作されたマシンをもとに参戦し競ったインディカーの歴史を彷彿とさせるDRL。21世紀になった現在も欧米それぞれのレース文化が保たれている一端だ。
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日本におけるドローン・レーサー育成の難しさ


プロ・チームRAIDENの存在でも明らかなように、日本でもドローン・レースの機運は高まっているものの、日本的な規制が立ちはだかる。「どこでも手軽に」ドローンを飛ばすことは許されないため、練習場所がそこかしこに点在するものではない。どの地方でも航空法に抵触しないように留意しなければならない他、行政からの規制も多い。

また、電波法の問題も大きい。電波を使用し映像を送信するFPVを実現するためには、電波法に則る必要があり、日本ではアマチュア無線の免許が必要となる。小学生でも操縦できるドローンながら「免許が必要」となれば、「誰もが参加できる」とはいかない。

そんな規制もあり、日本でのドローン・レーサー育成は難しい課題を抱えている。RIDENの母体DRONE SPORTS代表、小寺悠も「DCLでも通用するドローン・パイロットが日本ではなかなか育たない。競技人口を増やすためにも、規制緩和が必要」と吐露する。100km/h以上の飛翔体を無軌道にコントロールするドローン・レースでは、eスポーツ同様、鋭い反応速度が要求される。そのため、成人になってからプロのパイロットを目指すのは厳しく、若年層からの英才教育が必要。だが、そうした環境が整わないのが実情だそうだ。
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若年層からの英才教育は、モーターサイクルの世界でも、幼少期からミニバイクから乗り継いでいる日本人ライダーがMotoGP世界チャンピオンの座に就き、幼児期から卓球に慣れ親しんだプレーヤーが世界ランクの上位を締める、現在の日本卓球界を眺めても合点が行く。

こうした環境の中、足かせとなっている電波法を飛び越えるのが5Gと、ささやかれている。現在の5Gデバイスはまだまだそこまで小型化が進んでいるわけではないが、ドローンに搭載されたカメラから5GによってFPVが提供されれば、ドローン・レースの自由度は高くなる。携帯電話に使用される5Gだけに、免許規制対象からはもちろん外れる。5Gディバイスであれば、遅延もなくカメラからレーサーのヘッドギアに映像提供可能であり、かつ実際のモータースポーツのように数十台のマシンを飛ばすレースが日本でも開催できる。

「スーパー・ドローン・チャンピオンシップ」
幕張メッセで開かれた「スーパー・ドローン・チャンピオンシップ」のレース会場

5Gによる具現化可能な世界を模索し、NTTドコモは、ぷららおよびDRONE SPORTS社らは共同で3月31日、幕張メッセにて「スーパー・ドローン・チャンピオンシップ」を初開催。読売新聞、DMM.com、SPAIAなどがスポンサーとなり、Abema TVにて生放送が確定していたほか、GAORA Sports、d TVチャンネル、ひかりTVでも録画放送…の予定だった。

そう、本来であれば幕張メッセでLIVE観戦、そしてAbema TVで生放送と斬新な試みだったのだが、新型コロナウイルス席捲の折と重なり、運用スタッフの安全確保などを最優先としたため、無観客レースの上、テレビ・クルーも削減し、オンエアも録画のみとして決行された。
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文=松永裕司

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